研究実績の概要 |
意図せず,自動的・自発的に,他者の行動から特性を推論する自発的特性推論 (Spontaneous Trait Inference; STI)の文化差について,実験的検討を行った。特に,日本人はアメリカ人よりも自発的状況推論 (Spontaneous Situation Inference; SSI)も同時に生起しやすいのではないかという仮説のもと,誤再認パラダイムによる個別実験を昨年度に引き続き実施した。本実験のポイントは,行為者の特性と行動の生じた状況を暗示する行動記述文,および,人物写真,状況写真を提示し,その間の参加者の注視行動をアイトラッカーにより測定した点である。最終的に,ヨーロッパ系アメリカ人74名,アジア系アメリカ人72名,日本人72名の計218名の大学生を対象に実験を実施した。 結果から,3群のいずれもSTIとSSIを同時生起していたが,ヨーロッパ系アメリカ人のみSTIの生起がSSIの生起よりも大きいことが示唆された。またそれと対応して,3群とも人物写真の方が状況写真よりも長く注視していたが,その差はヨーロッパ系アメリカ人が他の2群よりも大きかった。これらは,文化心理学において示されている,北米の人々は中心的な対象に注意を向けやすく,東アジアの人々は文脈情報にも目を向けやすいという知見(e.g.,Masuda & Nisbett, 2006)と一致している。 さらには,このようなSTI,SSIの文化差が,analytic-holisticという思考の違いを反映しているのかどうかについても検討が必要だと考え,Analysis-Holism Scale (Choi, Koo, & Choi, 2007)に対する回答とSTI,SSIの相関について検討する実験も新たに開始した。
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