令和4年度にも、令和3年度に引き続いて、複数の視点取得を操作する新しい方法を用いたオンライン実験を約80名の学生を対象にして実施した。この実験の複数の視点取得条件(実験条件)では、3人の未知の異質な他者についての紹介記事を読んでもらい、それぞれの視点を理解してもらう質問に回答を求めた。統制条件の学生には、一般の人と大きく変わるところはないが、社会的に価値のある活動をしている3人の人物についての紹介記事を読んでもらった。そして、創造性課題として非日常的用途テストと遠隔連想テストを実施した。前者は拡散的思考を試すもので、「靴下」と「空き缶」の日頃の用途とは異なる使用法のアイデアをできるだけ多数挙げてもらった。後者は洞察課題で、提示した3つの漢字と組み合わせて熟語を作ることのできる漢字一文字を発見してもらった。 その結果、非日常的用途テストでも、遠隔連想テストでも、創造性課題の成績に実験群と統制群との間で有意差は認められなかった。この結果は、多様な視点取得の操作が失敗していた可能性、この手続きに十分には従わなかった参加者がいた可能性、用いた創造性課題が実験場面での創造性の変化を適切に反映できない可能性などについて考察した。現在はそれらの可能性について、取得したデータを用いて裏付けができないかどうか検討している。 以上に加えて、令和3年度実施の実験についても拡散的連想課題のデータ分析のため、新規の日本語データベースを購入して単語間の意味的距離を算出することを試みた。
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