研究課題/領域番号 |
17K04312
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
黒川 光流 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (40325543)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 組織内葛藤 / 葛藤管理方略 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,組織を取り巻く環境の絶え間ない変化によって生起しやすくなっている組織内葛藤のうち,特にリーダーとフォロワーとの間の葛藤に対するリーダーの管理方略によって組織の成果はどのように異なってくるのか,さらにはリーダーが用いる葛藤管理方略がリーダーの個人特性や課題状況によってどのように異なってくるのかを検証することである。本年度は,昨年度までに行った実験研究および調査研究によって得られた成果を精緻化するために,引き続き実験研究および調査研究を実施し,追加データの収集およびデータの再加工・再分析を行った。 実験研究では,集団が取り組む課題遂行に関する自信ではなく,フォロワーとの関係構築に関する自信を有しているリーダーが,フォロワーと協力的に葛藤を解決しようと試みる傾向があることが示された。また,組織の成果と強く関連することが予想されるフォロワーの反応を検証するための実験研究も追加で実施した。フォロワーの言動に対してリーダーが肯定的に捉えフィードバックしたとしても,課題に不慣れであること等により自己評価が低下しているフォロワーはネガティブに反応する可能性があることが示唆された。 調査研究では,昨年度までの看護管理者に加え,主任保育士,企業の管理者を対象としてデータ収集を行った。リーダーの個人特性としてリーダーの自信,管理目標,サーバント・リーダーシップ,組織状況としてチームワーク,そして集団の成果として課題パフォーマンスに加え,文脈的パフォーマンスに関するデータ収集を積み重ね,それらとリーダーの葛藤管理方略との関連を分析した。リーダーの個人特性と組織状況との組み合わせによって,リーダーの葛藤管理方略の用い方が左右されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って,実験研究および調査研究を実施することができた。実験研究では,100名以上の実験参加者からデータを得ることができた。リーダーの管理方略については,ビデオ撮影された行動をデータ化し,客観的指標として分析に用い,リーダーの個人特性および集団状況とリーダーの葛藤管理方略との関係を検証することができた。この成果を論文としてまとめ,関連学会の学術雑誌に投稿する準備をしている。組織の成果を示す指標については,今後更なるデータ化・分析の必要はあるものの,リーダーの管理方略と,組織の成果との関連が予想されるフォロワーの反応との関連を検証することができた。この成果は論文としてまとめられ大学紀要に掲載される予定である。調査研究では,更なる分析の必要はあるものの,データ数も着実に積み重ねられ,実験研究の知見の妥当性を示す結果が得られている。また,リーダーの葛藤管理方略に対するリーダーの個人特性と集団状況との交互作用効果の検証を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に,実験および調査2つの方法を用いてさらにデータを蓄積し,組織内に生起したリーダーとフォロワーとの葛藤が,リーダーの有効な葛藤管理方略を介して,組織の成果へとつながるプロセスの解明を進める。 実験研究については,さらにパラダイムを精緻化しながら,組織の成果として課題遂行量等の量的なものだけでなく,創造性や説得力等の質的なものも測定し,これらがリーダーの葛藤管理方略によってどのような影響を及ぼされているのか明確にすることに取り組む。実験課題や変数の測定方法,実験参加者を確保するためのシステムやデータ分析に必要な実験協力者の準備を進め,実験実施のための態勢を整えている。 調査研究では,調査項目の整備を進めており,必要な変数を測定するのに過不足のない調査票を完成させるとともに,調査対象者の業種・職種の幅を広げ,さらなるデータの収集・分析を行う。調査対象者の確保については,いくつかの団体との協力関係を構築し,データの収集とその分析結果のフィードバックをするための態勢を整えている。 また最終年度となるため,これまでの成果を関連する学会大会等で積極的に公表し,最終成果を複数の論文にまとめ,学術雑誌に投稿する。また,調査対象者が所属する団体を通して研究成果をフィードバックし,組織内葛藤の効果的な管理方略のあり方についての提言を試みる。さらに,本研究課題の次なる方向性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの繰越金があったのに加え,学会大会が研究代表者が所属する大学で開催され,そこで研究協力者と打合せの時間を十分に取れたため,研究協力者の所在地までの旅費の使用がなされなかったことが主な理由である。 繰り越された研究費については,データ収集や成果発表のための旅費,図書購入,および論文掲載料や英文校閲などに,有効に活用したいと考えている。
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