研究課題/領域番号 |
17K04315
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 哲郎 神戸大学, 法学研究科, 研究員 (60455194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マスメディア / 信頼 / インターネット / 実験 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、平成29年度はLadd(2012)の方法をベースに、シナリオを用いたプライミング実験によってどのような報道内容がマスメディアに対する信頼に影響するのかを検討した。クラウドソーシングサービスを通じて実験参加者をリクルートし、2017年9月にオンライン実験を行った。
まず、政治関心、政治的態度、マスメディア接触、インターネット利用等を測定した。これらの項目は共変量として分析に用いられた。次に、社会調査への回答者を無作為に5つの条件に配置し、オンライン上で実験を行った。実験では、①国会の議事運営に関して与党と野党の双方に対して批判的なニュース、②安倍内閣の支持率の上昇や下降に関するニュース、③船越英一郎と松居一代夫妻の離婚騒動に関するニュース、④マスメディアの論調が安倍政権に対して過度に批判的であると与党議員が非難したニュース、⑤マスメディアの論調が安倍政権に対して過度に好意的であると野党議員が非難したニュースの5種類のヴィニエットに加えて何も提示されないコントロール条件を加えた6条件が設定された。ヴィニエットを読んだ後にマスメディアに対する信頼が測定された。
分析の結果、ヴィニエットが提示されないコントロール条件と比べて、「マスメディアの論調が安倍政権に対して過度に好意的であると野党議員が非難したニュース」や「マスメディアの論調が安倍政権に対して過度に批判的であると与党議員が非難したニュース」の認知的顕現性を高めた条件ではメディアに対する信頼が低下することが明らかとなった。この結果は、政治家によるメディア批判がメディアに対する信頼の低下の一因であるとするLadd(2012)の知見を再現するものである。一方、Ladd(2012)で示された芸能ニュースがメディアの信頼を低下させる効果は日本では見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定されていた平成29年のシナリオ実験を順調に終了したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、インターネットにおける情報利用可能性がマスメディアに対する信頼に及ぼす効果について、シナリオ実験を用いて検証する。まず、平成29年度に実施した実験1と同様に、クラウドソーシングサービスを通じてリクルートした参加者を対象に社会調査を実施する。測定項目は実験1と同様である。次に、社会調査への回答者を無作為に4つの条件(コントロール条件、ネット情報条件、報道自粛理由条件、ネット情報+報道自粛理由条件)に配置し、オンライン上でシナリオ実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、データ解析用コンピュータとソフトウェアの購入を次年度以降に見送ったこと、旅費を執行しなかったことによる。平成31年度で用いる予定のオンラインニュースを模した実験サイトに改修の必要性が生じたことから、研究計画時に計上していなかった費用が発生する予定となった。次年度使用額はこの支出をカバーするために充当される予定である。
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