研究実績の概要 |
平成29年度と平成30年度の実験研究の結果に基づき、平成31年度は結果の一般化可能性を検討するためにオンライン上で社会調査を実施した。調査の主要な関心はインターネット上でのニュース利用行動とマスメディアに対する信頼の関係を検討することであるが、特にインターネットの利用におけるメッセージアプリを通したニュース接触の効果に注目した。これは、本研究課題の期間中、オンライン上でのニュースソースとしてLINEなどのメッセージアプリを通したニュース接触が急速に拡大したためである。日本ではLINEの利用者が約6割に達し(総務省, 2018)、ニュースメディアとしての利用も14%に達している(Newman et al., 2019)。これは、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルネットワークサービスを通じたニュース接触よりも高い割合となっている。メッセージアプリ上でのニュース接触は利用者の興味や関心に基づいたパーソナライゼーションが行われるだけでなく、メッセージのやり取りの副産物としてのニュース接触が生じるため、従来型のオンラインニュースサイトやポータルサイト上でのニュース接触とは異なる効果を持ちうる。データの収集は令和2年2月に完了し、現在データを鋭意分析中である。
研究期間全体を通じて、政治家による攻撃と競争の激化によるニュースの質の低下によってマスメディアに対する信頼が低下するという仮説は部分的に支持された。今後は実験研究の結果と最終年度に実施した社会調査の分析結果を統合的に解釈し、今後の研究へ展開する。
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