研究課題/領域番号 |
17K04320
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
中原 純 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (20547004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 自己複雑性 / 主観的well-being / 役割アイデンティティ |
研究実績の概要 |
高齢者の社会関係の豊かさが主観的well-being(SWB)と関連することは多くの研究で指摘されているが、多様な関係性の交互作用については十分な研究が少ない。本研究全体の目的としては、従来の活動理論(AT)では明確にしきれなかった社会関係の交絡要因がSWBへ与える影響を考慮するために、自己複雑性(SC)因果モデル(「1.P-SCの高い高齢者は、役割に関するネガティブな事象が及ぼすRIへの負の影響が小さいため、SWBは高く維持される」、「2.N-SCの高い人は、役割に対するネガティブな事象が及ぼす役割アイデンティティへの負の影響が促進される。役割アイデンティティが低下した結果として、SWBも低下する」)を生成し、前向き調査を通して、実証を試みる【研究1】。加えて、P-SCを向上させる介入プログラムを開発する【研究2】ことで、社会心理学の知見を地域社会へ寄与する。 上記目的において、2020年度はP-SCを向上させる介入プログラムを地域の中高年者が集まるサロンにおいて実施し、その効果を検証することが計画していた。しかし、高齢者を対象とする介入研究を予定していたため、2019年度末からの新型コロナウィルスの蔓延により、2021年度も計画が延期している。一方で、各個人のSCを算出するための式について、より妥当性の高いものが別の研究にて提言されていたため、これまでに取得したSCに関するデータの再計算を実施し、完了した。また、本研究のテーマに関する論文を英文オンラインジャーナル「Frontiers in Psychology」に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究期間の初期に実施した調査(研究計画記載の【研究1】)については、新型コロナウィルスの蔓延により、当初の計画では予定していた一部の学会での報告を、2021年度も断念したため、順調とは言い難い。しかし、新たなSCの計算式にて指標の再計算を実施したということで、必ずしも計画通りではないが、研究は進展していると考えられる。一方で、実施予定であった自己複雑性介入プログラムに関する研究(研究計画記載の【研究2】)は、新型コロナウィルスの蔓延により、2020年度から地域サロンにおける介入研究の実施が不可能になり、2021年度も同じ状況が続いた。そのため、研究全体の進捗状況としては、「(4)遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの蔓延が続く中ではあるが、研究目的を鑑みれば、【研究2】について、高齢者が集まる必要のない動画配信等を利用した介入プログラムの検証を実施すべきである。しかし、ウィルスが蔓延し、様々な外部での活動を中高年者が自粛している状況であれば、平常時であるとは考えにくい。つまり、本研究において重要である社会関係は平常時とは変化しており、心理状態としての主観的well-beingも異なっている可能性が高く、仮に介入プログラムの効果を検証するデータを得たとしても、そのデータの質には疑問が残る。2021年度は、新型コロナウィルスの蔓延状況が収束し始めた10月頃から、【研究2】の実施に向けて関係各所と調整に入ったが、2022年の年明けから再び感染者が増加したため、最終的に中止となった。2022年度も新型コロナウィルスの蔓延状況は予想が困難であるが、8月頃までは【研究2】の実施に向けて計画した上で、断念せざるを得ない状況であれば、秋以降に【研究1】で課題となったいくつかの点を解決するための調査研究を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延により、当初予定していた介入プログラムが実施できなくなったため。その蔓延状況は2022年度も予測することは困難であるが、8月頃までは当初の計画通りに介入プログラムの実施を模索する。その場合、介入プログラムへの参加いただける高齢者に対して謝金を支払う。しかし、介入プログラムの実施が不可能であると判断した場合、新たな計算式を利用した指標を用いて、自己複雑性因果モデルの精緻化を目指した調査を実施する。その際、対象者は、地域高齢者サロンに通う高齢者、またはシルバー人材センターに登録する高齢者に対する郵送調査となるため、調査票の郵送費、調査の回答に対する謝金として使用する予定である。加えて、これまで控えていた学会発表も行う予定であるため、その参加費、旅費としても使用する。
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