研究課題/領域番号 |
17K04321
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
清成 透子 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (60555176)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 協力 / 評判 / 互恵性 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで4人から6人程度の集団において、二者関係を繰り返し経験した後に集団全体で行う公共財ゲームにおける協力率の変動を検討してきた。その中で、興味深い知見が得られたため、当初の予定を延長してゲームの連結の効果と協力率推移に影響を与える心理傾向を特定することを目的としたより大規模な集団実験を2020年度に実施する予定であった。この目的のため、2019年度はそのためのプログラム開発を中心に進め、2020年度に本実験を実施する計画であったが、2020年度は新型コロナウイルスの影響により、対面で行う実験の全面的停止措置を余儀なくされた。2020年度前半は実験参加者・実験スタッフの安全確保のため、後半に実験を実施する予定で先延ばしを行った。しかしながら、状況の改善が見込まれず、大学構内への立ち入りの制約等もあったため、本来であれば対面で制御が可能な実験が望ましいのだが、こういったやむを得ない事態のため、急遽、全面的にオンラインで実施する実験へ移行するための準備を行った。2020年度はそのためのプログラム開発ならびにパイロットテストを段階的に行うところまで完了したが、本実験の実施までには至らなかったため、予算の繰越し延長申請を行った。また、前年度に引き続き、海外の研究者と共同で行った罰行使者に対する評判形成ならびに罰システムの成立に関する文化差を検討する国際比較実験研究プロジェクトに参加し、peerの規範維持行動に対する評判の差異の文化差を検討することを通して、普遍性と文化的影響の双方からの検討を行っている。知見の一部は論文として公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば昨年度中に本申請研究は完了する予定であったが、新型コロナウイルスによる影響によって、2020年度は大幅に計画を中断・変更せざるを得なかった。その中で、これまで全面オンラインで実験を実施するためのプログラム開発とデバッグ、パイロットテストまでは完了した点に関しては、よく健闘したと評価したいところであるが、参加者の通信環境に関する問題とリアルタイム同時実施のためのプロトコルの確認作業に関して、状況に応じて修正する点が多く、現在も検討中のため、やや遅れが出ているという評価は致し方ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は大規模な集団において評判形態が協力行動に如何なる影響を与えるかについての実験を全面オンライン実験で実施する予定である。ただし、全面オンライン実験に際して、パイロットテストをする中でいくつか問題点も明らかになっている。たとえば、匿名性を保持する目的のため、実験参加者の実験中の様子は監視できない。その場合、実験者側の指示通りに参加者が作業に従事しているのか把握できず、たとえば自宅でテレビを視聴しながら参加していたり、周りの人間と相談しながら参加したりする、といった点の統制が極めて困難である。また、参加者によっては通信環境がよくない場合もある。計画中の実験では、集団で同時に意思決定をし、グループメンバーの意思決定内容をフィードバックするフェーズも含まれているため、所属グループ内の誰かが途中から反応しなくなった場合には、最悪、そのグループは途中で実験続行を断念しなくてはならない。そういった問題点の対処は技術的にも困難である。したがって、新型コロナウイルスの国内感染状況の改善が見込まれ、大学構内での対面実験実施に際する感染リスク問題がクリアできた場合には、対面での実験実施を検討したいと考えている。とはいえ、現時点では年内の収束の見通しがたっておらず、オンライン実験以外の方法は困難だという予測のもと、計画を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの影響のため、当初予定していた対面式実験を全面的に中止せざる得ない状況であった。そのため、当初の予定を変更して、オンライン実験の準備に取りかかり、そのためのプログラミング開発とパイロットテストを行った。2021年度も引き続き、新型コロナウイルスの影響によって対面実験の実施は困難であろうことから、オンライン実験を実施し、本来であれば2020年度に完了していた本申請研究を完了させる予定である。
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