研究実績の概要 |
本研究は、イノベーションを促進するための個人と組織に関する心理学的研究であり、新たな視点から、従業員個人の顧客や同僚など他者への志向性と、組織内部に潜む変革への抵抗などの抑制要因などが、いかに企業のイノベーションに影響するかのメカニズムを実証的に検証することを目的としました。2017年度から2019年度にかけて仮説に基づくデータを収集、分析しました。理論研究を踏まえ、適切な定義と尺度を作成し、企業2社でのデータ収集を終えました。うち一社は、我が国を代表するイノベーティブ企業である製造業(静岡県、グループ企業従業員全体900人)A社であり、セルフチェックによるデータに加え、管理者・役 員によるこれらの部下への評価データが収集できました。これらの研究の成果について学会報告しました。 2020年度は、プラハで開催予定であったICP(32nd International Congress of Psychology)2020に”The Effects of learning goal orientation on innovative, helping and in-role behaviors”のテーマの下に参加予定でしたが、コロナ禍のため2021年度に延期されることになりました。しかし、「従業員の学習目標志向性が革新的行動に及ぼす影響過程 : 調整変数としての心理的安全性及び媒介変数としての受益者接触との関連メカニズムについて」(2020, 商学集志, 90, 333-352)および「経営革新を促進する多面的成員行動の規定因としての環境要因および個人特性について:心理的安全性と学習目標志向性の影響過程」(2020, 経営論集, 56,3-24)を査読論文として刊行できました。 そして、2021年7月には、先述の延期となったICPにオンラインで参加し、報告できました。その報告を通してオランダ他数か国の研究者とネットワークができたことは大きな成果であると感じています。
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