研究課題/領域番号 |
17K04323
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
外山 みどり 学習院大学, 文学部, 教授 (20132061)
|
研究分担者 |
山田 歩 滋賀県立大学, 人間文化学部, 講師 (00406878)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 社会的認知 / 文化 / 原因帰属 / 自己認知 / 他者認知 |
研究実績の概要 |
帰属過程を含む社会的認知の文化差については、主に文化心理学の方面からさまざまな理論的仮説が提出されているが、具体的な諸現象に関して文化差があるのか、それは質的な差であるのか、量的な差であるのか、文化差があるとすればそれはどのような原因によって引き起こされたのか、などの基本的な問題に関して、納得のいく説明がなされていないのが現状である。また理論間の関係や用いられる概念の異同などについても十分な整理がなされていない。本研究は、原因帰属や特性推論を含む帰属過程、その他関連する社会的認知の現象について、文化差の有無とそれに関連する諸要因について、理論的、実証的に検討することを目的としている。 2019年度には、年度はじめにウェブ調査を行い、日本の一般社会人が日常的に遭遇する諸事象に対して、どのような原因帰属を行うかについてのデータを収集し、続いて7月には、同様の事象に対して大学生が行う原因帰属についての調査を行った。ウェブ調査の結果については、2019年の日本心理学会大会で研究発表を行った。その他、自己記述については、書式と教示によって記述内容が変動するという前年度に行った実験の内容を分析・検討して、2019年の日本社会心理学会大会で発表している。自己記述に関しては、日本人とアメリカ人の記述が大きく異なるという過去の研究結果から、文化によって自己認識や自己定義が異なるという主張がなされることが多いが、過去に行われた研究自体の方法論上の特徴が、結果に影響を与えている可能性が考えられ、一概に文化差と結論づけることはできない。その意味でも、記述の書式や教示等の効果を検討することは重要である。 理論的な方面では、社会的認知関連の文化差に関する研究のレビューを行い、諸理論の比較を通して、用いられる概念の異同や文化差の起源に関する問題などを考察して、紀要論文としてまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
帰属過程や自己認知に関する日本国内の被験者・回答者のデータは、2019年度までの実験と調査によって収集されている。特に、原因帰属に関する全般的な傾向と、帰属測定用の尺度の使用に関する問題、自己記述の内容と書式や教示の関係などについては十分なデータが得られており、文化心理学における通説に対する問題点の指摘も行ってきた。 しかし、個人的な事情もあり、2019年には海外出張をすることができず、海外の研究者との交流は限られたものに留まった。さらに2020年に入ってからは、新型コロナウィルスが世界中に広まったために、国際学会が中止になるなど、国際比較研究を実施することが困難な状況となっている。今後、この難局を打開すべく、可能な研究方法を検討し、ウェブ調査などの方法とそれに適した題材を検討するなどの模索を行い、できるだけ早く実質的な国際比較研究に取りかかる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、原因帰属や他者の特性推測に関する国際比較データを収集することが一番の課題である。具体的には、海外の研究協力者に依頼して、記述型のデータを収集する方法と、ウェブ調査等により、複数の国の回答者から反応を得る方法の2種類が考えられる。しかし、欧米でもいまだに新型コロナウィルスの感染拡大が終息していない状況を考えると、直接に海外の研究者に連絡をとり、質問紙等でデータの収集を依頼して、その結果を比較するという方法をとることは困難であり、ウェブ調査が中心になると思われる。ウェブ調査の場合には、質問の種類や反応の取得法などに方法論上の制約があるが、帰属過程の主要な側面に関して、できるだけ重要な情報を取得できるよう工夫を行う計画である。 それと同時に、文化そのものについての考察と、文化が人間の認知に及ぼす影響、それらの文化差の背景にあると想定される社会的・歴史的・思想的要因に関する理論的な検討も引き続き行う。そのため、文化論や人類学、社会学、歴史学にも視野を広げて、文献研究を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、2019年度に国際比較のデータ収集ができず、それが次年度に持ち越しになったことと、年度末に予定していた海外学会への出張と海外の研究者との研究打ち合わせをすべて中止せざるを得なかったことにある。 新型コロナウィルスの影響で、国際学会や国際交流の機会は今後も制約を受ける可能性があるが、国際比較のデータ収集は必ず行い、必要な情報の入手に努力する予定である。調査会社や調査機関を通じた国際比較研究にはかなりの経費を必要とするため、次年度使用額の多くの部分がそのために支出されると見込まれる。その他は、研究の総括のための文献等の購入に使用する予定である。
|