今年度は、乳がん検診の選好について乳がん非経験者を対象として実施したWEB調査の調査データを継続的に分析した。選択型実験では、「がんがある時にがんが正しく見つかる確率」、「検診をすすめられた方法」、「予約から検診を受けるまでの待ち期間」、「検診を担当するスタッフの性別」、「検診を受けるためにかかる合計費用」の5属性から構成される仮想的な検診を2つ1組として提示し、どちらの検診であれば受けようと思うかを尋ねた。検診属性を独立変数、いずれかの検診を受ける・受けないの選択を従属変数として、潜在クラスモデルアプローチを用いた分析を行った。潜在クラスモデルのクラスを分析するメンバーシップ関数には、個人属性・特性、心理社会的要因等を用いた。有意水準は10%に設定した。 推定の結果、クラス数は4とした。クラス4を基準として相対的に、クラス2は学歴が低く、乳がん検診受診経験が少ないクラス、クラス1はクラス2に加え乳がん検診関連知識が低いクラス、クラス3はクラス1に加え血縁者の乳がん罹患が少ないクラスと考えられた。 検診属性の係数の違いについては、クラス4とクラス2では、「検診をすすめられた方法」は『誰からのすすめもなし』を基準として『医療従事者にすすめられた』場合に効用が上昇したが、クラス4ではクラス2で有意であった『自治体から郵便が届いた』の係数が有意とはならなかった。また、クラス1では「予約時からの待ち期間」と「検診の感度」が有意ではなかった。さらに、クラス3では「検診をすすめられた方法」と「検診スタッフの性別」が有意ではなかった。 潜在クラスモデルを分析に用いることで、条件付きロジットモデルを用いた時にはわからなかった傾向の異なるクラスの存在とその原因について示唆を得ることができたと考えられる。
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