研究課題/領域番号 |
17K04327
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
中村 國則 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (40572889)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 情報 / 価値 / 数値 |
研究実績の概要 |
情報の価値に関する心理学的プロセスの問題を検討すべく,データ収集を重ねた.その中では,寄付といった行為についてたまたま提示された数字が寄付金額に影響することを実験的に示した.この研究の中では,寄付金額を増やす意図で示された”最低○○円”といった最低金額の提示が,実際には寄付金額を低めてしまう効果を持っていることを示した.また,”打率0.300”といった基準となる数値が,実際の人間行動にどう影響しているかを,過去の日本プロ野球のデータを用いて分析し,プロ野球選手の実際の成績に”打率0.300”といった基準値が大きな影響を与えていることを示した.
加えて,情報を認識する主体のモデル化のあり方に関する理論的議論を論文化した(中村,2018,心理学評論).この論文では,近年注目を集めているベイズモデリングについて議論し,その発展と貢献について概観し,考察した.具体的には因果推論,仮説検証といった分野におけるベイズ的アプローチの代表的な研究を紹介し,ベイズ的アプローチの定着や発展には,(1)研究対象に対する理論的考察といったベイズとは別の側面の理論的な整理,(2)人間にはある程度の合理性や認知的能力を仮定してもよい,といった人間観の変化,の2点が必要であったことを論じた.そのうえで,その説明力を重視するよりは,研究対象を深く理論的に考察することがベイズ的アプローチの発展にとって重要であると結論した.このように,実証的・理論的双方で研究の進展があった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要のところでも述べたように,実証面・理論面双方で進展があり,順調に進んでいるものと評価できる.実証データの発表が少々少ない点はあるが,その分理論的な説明の部分を深めており,全体としては当初の想定の範囲内に順調に進んでいるものといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は学会での発表・論文公刊をより積極的に行うことが課題なので,Cognitive Science SocietyやPsychonomic Societyのような国際学会,心理学会,認知科学会,行動経済学会といった国内学会での発表や,Psychological Science,Cognition,Journal of Behavioral Decision Makingといった国際雑誌での公刊を目指したい.また,初年度に深めた理論的考察,を踏まえ,新たな実証的問題にも取り組んでいきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理論的分析にやや重点が置かれ,実証的研究・および研究成果の公表が遅れたことが理由と考えられる.次年度はデータ収集と分析を進めると同時に,研究成果の英語論文化に力を注ぎたい.
|