研究課題
研究の目的は、日本の特徴を考慮、検討しながら恨み忌避感という新たな概念がいかに協調性などの多様な心理学的変数と関係するか、予測するのかを確認していくことであった。前年度完成した恨み忌避感尺度について2019年6月「心理学研究」に投稿して秋に掲載が決定した(2020年4月号で刊行)。これによって作成した尺度の妥当性が担保された。2019年7月には大学生を中心に300名ほどのデータをとり、恨み忌避感が主張性を抑制するという当初の仮説で想定した効果を確証することができた。さらに日本において強い「空気を読む」傾向や「がまん主義」などの変数とも正相関を見出した。制御焦点との関連では、防止焦点の高い傾向のある者は、恨み不安を通じて、より主張を抑制的とすることがわかった。2019年12月には国際調査を行った。調査の業務委託を通じて、アメリカで400名のデータをとった。恨み忌避感尺度の英語版を作成して、制御焦点、関係流動性を通じた自己主張への効果と災害観への影響をみた。恨み忌避感の強い者は公正世界観も高く、被災者の自己責任をより強く感じ、被災者バッシングの傾向が見られた。また日本のデータと同様に、媒介分析において、制御焦点で防止焦点の高い者は恨み不安を通じて主張を抑制する間接効果が見出された。恨み忌避感は3因子からなるが、「恨み不安」「恨み被害忌避」「言動抑制」のいずれについてもアメリカ人の平均値は日本人よりも有意に低く、恨み忌避感は日本においてより顕著な文化的特性であることが確認できた。さらに、清浄性を志向する清浄志向/穢れ忌避傾向尺度を作成し(日本感情心理学会発表)、清浄志向と恨み忌避感が正相関することを確認し(講演発表)、日本人の心理的傾向を確認することができた。AMPによる実験も成果を得て、日本社会心理学会で発表を行った。感情研究の成果を心理学辞典に執筆した。
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心理学研究
巻: 91 ページ: 1-9
https://doi.org/10.4992/jjpsy.91.19204