従来の製品事故や今後の課題として指摘さる自動運転中の突発事故への対応場面などを背景に、マン-マシンインターフェースと人間行動との関係性にあらためて注目が集まっている。産業現場においては、マン-マシンインターフェースと人間行動との関係性の一面はヒューマンエラー(以下HEと記す)として問題化する。HEを個人の要因として「不注意」などのラベリングにより事故の原因とすることは再発防止には殆ど役に立たない。HEが起きるものとして、起きてもトラブルにならないような対策をするのが鉄則である。とは言え、一定の確率で発生することは避けられないHEを少しでも抑制することも重要である。HEの制御のためには、HEの発生機序や予兆を捕らえることが重要である。そのため本研究では2017年度から以下の研究を進めてきた。 1.HEの背景要因の整理:HEはどのような状況、条件で発生するのか、当事者の知識や行動がどの様に影響するか、以下の方法で整理した。(1)質問紙調査、(2)文献調査=データベース化、(3)行動分析学的分析、(4)HE事例分析結果のDB化とその活用方法の考察 2.HEの予兆を実験的に調べるためのHEの再現実験の検討:HEを実証的に研究するためには、安定的にHEが再現できる実験課題が必要である。2021年度は「ストループ効果」を利用した、HE誘発課題を検討した。 2022年度は、更なるHEの誘発課題の検討を進めた。産業場面におけるHEを想定し、今後産業場面で増加すると予測されるVR(Virtual Reality)的な作業(機器遠隔操作)におけるHEに関する知見をまとめた。またHE防止のための実効的な教育方法として注目されているVRシステムを用いてのVR教育課題(転落災害、踏み抜き災害、運搬作業中の災害、高所作業車使用中の事故)によるHE発生の状況を検討した。
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