研究課題/領域番号 |
17K04338
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 道代 東北大学, 教育学研究科, 教授 (60312526)
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研究分担者 |
黒澤 泰 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 講師 (00723694)
神谷 哲司 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60352548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 夫婦ペアレンティング / 子育て期 / 批判 / 促進 / 調整行動 / 父親関与 |
研究実績の概要 |
1.夫婦がともに子育てを行う(夫婦ペアレンティング)にあたり,母親の認知する子どもの外在化問題行動と父親の育児関与が,父親の育児に対する母親の調整行動(促進,批判)および父親が認識する育児関与に及ぼす影響を検討した。第一子2歳~17歳の夫婦2328組のデータを収集し共分散構造分析を行った結果,子どもの外在化問題行動は,母親による父親への促進を低減させ批判を高めていた。母親による促進は,父親の認識する育児関与を高め,それを見た母親はさらに父親への促進を高め批判を低減するという夫婦ペアレンティングの循環が示された。母親による批判は、父親の認識する育児関与に必ずしも有効ではなかった。 2.父親を促進・批判しているという母親の認知、母親から促進・批判されているという父親の認知は、各々の1年後の促進・批判認知にどう影響するかを、第一子年齢群の差異も含めて縦断的に検討した。2時点における父親と母親の促進、批判が個人内と夫婦間で影響を与えることを想定しAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)分析を行った。Actor効果を有意に上回るPartner効果は認めなかったが、2-3歳群の父親では、他群より有意に高い促進と低い批判のPartner効果が見られた。促進は13-14歳群、16歳―17歳群で2-3歳群より有意に低く、批判は7-8歳、16-17歳群で有意に高かった。 3.母親から父親への批判の様相について、幼児の母親面接を通じて検討した。父親が自ら気づいて子育てに関与していないと思うと、母親は直接間接に批判を行う。夫に強く言えず間接的になるのは夫婦間の葛藤回避に関わっていた。授乳,泣き,「ママじゃなきゃダメ」,いやいや期は,母親が「自分でなければ」と思う子ども要因であった。子どもへの適切なケアやしつけに関する父親への批判は,協力者全員に見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始初年度として、当初予定計画どおり遂行した。夫婦が子育て行うにあたって母親が父親に向けて行う調整行動のメカニズムについて明らかにし、子育て期ごとの特徴を示すことができた。この成果は投稿論文としてまとめ学会誌に掲載された。特に、子どもの外在化問題行動が母親から父親への促進・批判行動に影響を与えているという結果は、育てにくい子どもをもつ親への子育て支援において重要な示唆である。また母親が夫婦ペアレンティングを促進あるいは批判によって調整することにより、夫婦間に好循環あるいは悪循環が生じる可能性も示唆され、母子のみならず家族システム全体を考慮した支援が必要であることが示唆された。一方、母親の調整行動についての縦断的なpartner効果が子育て期によって異なることも示され、子どもの思春期危機を夫婦でともに対応していく際の課題として、次につながる重要な手がかりが得られた。同時進行として、児童期、思春期の子どもをもつ母親と父親を対象とした面接調査を開始しており、次年度も引き続き実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は研究の2年目として、前年度開始した児童期、思春期の子どもをもつ母親と父親を対象とした面接調査を継続する。成果の発信としては既に収集した幼児期の父親と母親を対象とした夫婦ペアレンティング調整行動に関する面接調査のデータについて(1)母親から父親の子育てに対する批判および促進に関する母親の認知するエピソード分析(2)母親から父親の子育てに対する批判および促進に関する父親の認知するエピソード分析を行う。その際、①夫婦ペアレンティングに影響を与える子どもの存在と役割 ②両者の関係調整の努力としての促進と批判行動という視点をもって取り組む。なお幼児期を概観することを通じて、進行中の児童期・思春期の夫婦ペアレンティング面接データ分析の枠組みを見出すことも本研究中心課題に向けたアプローチとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予算を適正に使用した結果、41536円の残額が生じた。平成30年度予算と合わせて、調査費用(旅費、謝金))の一部として使用する予定である。
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