研究課題/領域番号 |
17K04340
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
松本 光太郎 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (60420361)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 爪切り / 幼児 / 母親 / 日常行為 / 痛み / 身体 / 言語 |
研究実績の概要 |
(1)乳幼児期の爪切りをふくめた生活行為を1~2か月に一度、母親に質問を送り、その質問を皮切りにやりとりする調査は継続している。子どもたちが4~5歳になったこと、下の子どもが出来た家庭もあること、母親の状況の変化、そしてコロナウィルス禍でビデオ会議システムが広まったことにより、調査の方法は母親の要望に応えながら柔軟に変更している。一方で、この一年はコロナウィルス禍により、調査の一部であった各家庭を訪問して家庭の様子を含めた子どもたちの生活行為を直接観察することができていない。間接的に子どもたちの様子をビデオ会議や動画によって垣間見ることはできているが、メールやSNSを介して子どもの生活行為を調査する本調査の足りない部分を直接会うことで補うことができない状態が続いている。すでに行った調査の一部の論文投稿に向けて鋭意執筆中である。 (2)横断調査を行う予定であった高齢者の爪切りについては、コロナウィルス感染による重症化の可能性があるため、依然高齢者と面談することが難しく、とりわけ施設に居住している高齢者の調査が進んでいない。本研究期間を1年間延長して様子を見ているところであるが、今後も見通しが明るいとは言えない。そのなかで、施設居住の高齢者の日常行為に注目した著書『老いと外出――移動をめぐる心理生態学』(336p、新曜社)を2020年11月に公刊した。この本の6章において、手を用いた行為について、特に缶コーヒーを飲むというささやかな行為について詳細な検討を行っている。この検討は、爪切りが課題となり、他者を巻き込んで実現する高齢期の特徴を提示している点で、爪切り研究につながる研究成果である。 (3)当研究の研究方法に関連して、『質的心理学研究』誌上にて特集「質的研究法の拡張」の編者を担っている。投稿は締め切り、2022年3月の発刊に向けて、投稿された論文の査読が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳幼児の爪切りに関する縦断研究について、多くは順調に調査を継続できているものの、一部調査ができない状態が昨年からコロナウィルス禍において続いている。 高齢期の爪切りに関する横断研究は、高齢者と面談することが難しく、とりわけ施設に居住している高齢者の調査が進んでいない。生活行為の調査であるため、コロナウィルス感染の可能性が低減しないと調査を進めることは難しいため、状況の改善を待っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)0歳から始めて、現在4~5歳まで継続している爪切りを含めた生活行為の調査について論文の投稿を行う。また、4人の子どもたちの調査は継続する。 (2)本研究の方法に関連する研究法の拡張について、『質的心理学研究』誌上の特集において編集担当として貢献する。 (3)高齢者を対象にした爪切りの調査については、新型コロナウィルスの可能性が低減した際に、状況を見ながら実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、昨年度末に続き、子どもの観察を行っていただいているご家庭に訪問できなかったため、謝礼品を渡すことができておらず、また交通費の支出もなかった。それらの経費が次年度に引き継がれている。高齢者に対する調査時の謝礼品についても調査実施が可能になった際には使用する予定である。
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