研究課題/領域番号 |
17K04342
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩一 群馬大学, 大学院教育学研究科, 教授 (40222012)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自伝的記憶 / 自伝的推論 / 省察 / 授業 / 教育実践 / 教員 |
研究実績の概要 |
「教育実践経験への意味づけと教師としての成長-自伝的推論の観点から」という主課題のもと、平成30年度の研究計画に従い4つの柱で研究を進行させた。 第一に、30~50歳代の現職教員を対象に教育実践に関わる成功・失敗経験の想起を求め、自伝的推論尺度や自尊感情、教職アイデンティティ尺度への回答を求めた。第二に、本学の教育実習委員会の協力のもと、教育実習を終えた学部3年生に質問紙調査を行った。調査内容は第一のものと同じである。第三に、本学教職大学院を過去10年間に修了した者に質問紙調査を行い、研究への取り組みをどう意味づけているのか、どのような職能成長を実感しているかを検討した。十数名には面接調査も実施し、意味づけや職能成長の内容についてのナラティブデータを収集した。第四に、教職大学院2年次の院生3名の実践に際して参与観察を行い、授業参観、研究会参加、実践終了後の面接調査を通して、教員自身の学びや職能成長の様子を観察した。また院生だけでなく勤務校の校長にも面接を行い、職能成長について別の立場から評価を聞きとった。 第一・第二の検討から、ネガティブ経験を重視する従来の知見とは異なり、成功も失敗も強く意味づけられていること、意味づけの程度と教員としてのアイデンティティとの間に関連があることが見出された。第三の検討から、教職大学院2年次には研究と勤務の両立というきわめて忙しい状況にありながら、研究を「ストレッチ経験」と捉えていること、この経験を通して職能成長を実感していることが見出された。第四の検討から、理論に基づく特定の手立てを授業に半年間継続して生かすことで、教員自身が学ぶこと、手立ての有効性が高まること、生徒の学びが深まることが見出された。教員自身が感じる職能成長は、管理職による評価とおおむね一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の報告書に記した「今後の研究の推進方略」通りに進捗している。学部実習生、30~50歳代の現職教員、教職大学院在学生と修了者、さらに学校長という幅広い協力者を対象に、質問紙調査と面接調査を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までに、学部実習生、30~50歳代の現職教員、教職大学院在学生・修了者、学校長という幅広い協力者を対象に、質問紙調査と面接調査を実施できた。そこから個別に得られた知見を整理するとともに、教職課程~現職教員(若手)~現職教員(ミドルリーダー)というキャリア発達の軸に沿って、成果を統合的に整理する。また、その際には、混合研究法の枠組みに基づき、量的データと質的データを関連付けた整理を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声データの文字化に必要と判断して200,000円を前倒し請求した。面接調査の総時間数が予想よりも短くなったために、42,130円の次年度使用額が発生した。次年度分は、旅費、面接調査に伴う音声データ文字化、データ入力などに使用する計画である。
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