前年度までの研究が主に現職教員(小中学校)を対象としたものであったのに対して、2020年度は学部の教育実習におけるおけるリフレクションを中心に検討した。具体的には、学部教育実習を終えた3年生を対象に、質問紙調査と面接調査を実施して、実習経験に対するリフレクションの程度、リフレクションのツール、また周囲の教員や実習生からのサポート、実習を通しての成長感を検討した。質問紙調査の結果、(1)実習生はリフレクションを行い次に生かしている、(2)指導案・授業・実習録などを通じて指導教員や実習生から提示されるコメント(フィードバック)から気づいたという意識が強い、(3)実習生は抽象的な自己理解という側面よりは日々の実践に直結した力量について、成長を感じていた、(4)実習生は周囲から精神支援よりは業務・内省支援を強く受けていた、(5)実習生自身が成功や失敗に目を向けてリフレクションすることが、成長感と結びついていた、といったことが見出された。 また面接調査の結果からは、以上の傾向が具体的に聞き取られた。また経験を振り返り次に生かす「経験学習」を促進する条件と抑制する条件が聞き取られた。経験学習を促進する条件としては、(1)同じ教科の授業を繰り返すこと、(2)他者から適切なフィードバックを受けること、(3)経験を生かさざるを得ない環境に置かれること、(4)経験を次に生かす状況が保障されていること、(5)本人にリフレクションを生かそうとする志向性が強いこと、などが見出された。また実習録の書き方などを工夫することで、経験学習にプラスになることも示唆された。 以上の結果を踏まえて、経験学習サイクルを転回させるツールとしての実習禄や指導案のあり方が示唆された。
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