現代の青年の対人関係と適応の関連について研究計画段階では,次のように考えられていた。すなわち,ランチメイト症候群は過他者から傷つけられることを強迫的に恐れ過敏性自己愛の特徴が高いことから「内在化」の特徴を強く示し,また他者の視線を気かけている。一方,軽躁的な青年は,他者の視線を気にしながらも外向的に振る舞っており外在化の特徴を示していると考えられる。また「ふれ合い恐怖的心性」を持つ者は内在化の特徴を示しながらも他者からの視線を気にする必要のな程度まで対人距離をとっている青年と考えられる。また「内在化」「外在化」という要因は健常なパーソナリティ特性と連続しており,必ずしも不適応的な側面だけではなく,適応的な意味も含まれていると考えられる。よって,内在型の不適応が想定される。 平成29年度はまず,本研究の前提となる現代青年の友人関係に関するこれまでの研究で得られたデータと知見を整理し,その結果をヨーロッパ発達心理学会および日本教育心理学会において発表した。 次に「ふれ合い恐怖的心性」,および「ランチメイト症候群」の位置づけについて,これらの傾向が高い大学生が当初の研究計画で想定されたモデルに位置づくことを検証するために大学生に対する調査を実施した。具体的には,以下の尺度項目を用いた。すなわち不安場面尺度,Bif Five尺度短縮版,ふれ合い恐怖尺度,自己意識尺度,自己愛的脆弱性尺度短縮版,共感性,ランチメイト症候群尺度,友人関係尺度について,モニタ型インターネット調査を用いて,日本国内各県の大学生740名に対する調査を実施した。本研究の分析結果については,本年度の日本心理学会大会において発表を予定している。
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