本研究は,「教育実践の変容可能性」について検討しようとするものである。特に,「児童生徒の多様な教育ニーズに応じた教育実践」という現代的課題に対応するために,どのような個人的・組織的変化が必要か,また,何がそれを促進したり制限したりするのかについて検討する。日常を異化するような経験によって,ナラティヴや文化の存在,葛藤,変容は可視化されやすい。そのような機会として本研究では,学校行事を切り口として検討を進め,そこから新たに「教員の異動」という切り口を得たことから,この2つに焦点化して検討を進めてきた。 2021年度は研究のまとめを行うにあたり,知見の一般化という観点からインタビューデータを追加収集した。本研究を開始した2017年からは社会状況が大きく変化した。学校行事に関しては,コロナ禍による変化が大きいことからその経験を尋ねた。また,教員の働き方も変化してきており,小学校において教科担任制が導入されるという変化がその一つであることから,学級担任を持たずに専科として働く教員から見た全校行事について尋ねた。また,異校種間異動も昨今検討が進んでいることから,その経験者に学校行事や異動について尋ねた。これらの追加データの収集に加え,本研究の調査協力者に,「教育実践を語ること」や本研究の知見について尋ねる振り返りインタビューを行った。
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