研究課題
本研究では,「他者との相互作用によるモニタリング促進」仮説を提案し,(1)実験研究により仮説を検証するとともに,(2)当該効果がより大きく発揮されるための教示を特定し,最終的には,(3)大学の授業場面に適用可能な指導枠組みの開発を行うことを目的としている。このうちの(1)にあたる実験を行い,「他者に向けて自らの思考過程を言語化する際には,他者に了解可能な形で伝達する必要があることから,自らの思考活動に対する吟味,すなわちモニタリング機能が発揮されやすくなる」という仮説について検討した。具体的には,参加者は,マウスの操作練習として2分間の練習課題を行った後,本課題であるTパズルに取り組んだ。本課題開始5分後に,参加者は所定の用紙に指示された内容を3分間で書き記すよう求められた。言語化(自己)条件では,「この後のあなたの取り組みに役立つように,先ほどの5分間で考えていたことをなるべく具体的に記述して下さい」と,自分に向けて思考を言語化するよう教示した。それに対して,言語化(他者)条件では,「この後の別の参加者の方の取り組みに役立つように,先ほどの5分間で考えていたことをなるべく具体的に記述して下さい」と,他者に向けて言語化するよう教示した。統制条件では「最近興味のあることについて,なるべく具体的に記述して下さい」と,課題とは関連のない内容について言語化することを求めた。この言語化フェーズ終了後,引き続き10分間の制限時間で本課題に取り組むよう求めた。制限時間内での解決成績を比較したところ,言語化(自己)条件と言語化(他者)条件の間には差は認められなかった。また,両言語化条件での解決成績は統制条件より低く,言語化の妨害効果が認められた。以上より,ただ他者を想定するだけでは,言語化の妨害効果を減じることは難しいことが示唆された。
3: やや遅れている
当初の予定では,(1)「他者との相互作用によるモニタリング促進」仮説の検証に加えて,(2)当該効果がより大きく発揮されるための教示を特定するための実験を実施予定であった。しかし,2018年度には,仮説の検証にあたる実験のみしか実施できなかった。なお,この実験の予備的検討の部分については,2019年7月に開催される国際学会で発表することが決定している。また,本実験の結果についても2019年11月に開催される国際学会において発表予定である。なお,UKにおいて実施したこの実験では予測とは異なる結果が得られたが,これが何に起因するのかを特定する必要があることから,名古屋大学において追加実験を実施する予定である。その結果と併せて,論文化を進める予定である。
2018年度にUKにおいて実施したのと同じ実験を名古屋大学においても実施し,結果の頑健性を確認する。また,「他者との相互作用によるモニタリングの促進効果」を最大化するための教示の特定を目的とした実験を行い,そこで得られた結果を踏まえて,大学の授業場面に適用可能な指導枠組みの開発を行う。当初の予定より遂行が遅れていることから,実験補助者を雇用して対策を講じる。2018年度に得られたデータについては,国際学会において発表を行い,そこで受けたコメントも参考にしつつ,追加実験と併せて論文化を行う。
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