研究実績の概要 |
本課題は,高等教育において主体的で真正な学びあいのあり方を解明することが目的であった。2020年度では,「真正なる学びあい」の成立を促す実践を実際に試みて,モデルの検討を行った。社会人教育に関する研究などでは職場において内省を支援することの重要性が示されてきている。内省支援とは,学びのパートナーのリフレクションの深まりを支える対人的なかかわりのことである。仲間同士の学びあいに関する研究であるピア・ラーニング(中谷・伊藤, 2013)では,パートナーの学びの意欲を支えあうことの大切さが指摘されてきている。これらをふまえ,本研究では,とりわけ,動機づけの自己調整(self-regulation of motivation),共調整(co-regulation of motivation),社会的に共有された調整(socially shared regulation of motivation)に着目して,主体的な学びあいの様相に深く迫ることをめざした。構造方程式モデリングによるパス解析によって,3つの動機づけの調整のモードから学業的エンゲージメント(academic engagement)やパフォーマンスに至るプロセスについて明らかにした。人と協同することへの認識がどのようであるか,どのような内省支援を行っているかが,これらのプロセスにおいて介在している可能性が示唆された。生涯に亘って「ともに主体的に学びあう力」と何か,現在の高等教育において求められる実践とは何かについて考察を行った。
|