研究実績の概要 |
補充調査として,子の母親に対する依存形態と母親の子に対する依存形態が精神的自立や主観的幸福感にどのような関連をもつかについて検討を行った。近畿圏の18~28歳の大学生227名(女性138名,男性89名:平均年齢 20.44, SD=1.81)とその中から協力が得られた母親96名に対して,前者は留置法,後者は郵送法で質問紙調査を行い,以下の結果を得た。 ①依存形態と母親からの精神的自立については,娘で母親への互恵的依存が精神的自立と関連しており,互恵的依存が高いほど主観的幸福感も高く,とりわけ母親と別居している娘にこの傾向が強かった。他方,息子では依存形態と精神的自立に関連はなく,居住形態の影響もなかった。②依存形態と母親に対する密着度については,娘,息子いずれにおいても互恵的依存者が対象分散者や依存否定者よりも密着度が高く,互恵的依存者が母子密箸を強く認識していることが明らかになった。③子の母親に対する依存形態と母親の子に対する依存形態との関連については,互恵的依存の母親と娘で依存拒否間のみに強い関連が見られ,依存欲求や統合依存にはあまり関連が見られなかったことから,依存に対する肯定感ではなく,否定感が娘と母親に同期することが明らかになった。④娘が母親に対して互恵的依存である場合も,母,娘双方がそれぞれに互恵的依存である場合も,娘の母親に対する密着度,母親の娘に対する密着度ともに高く認識されており,互恵的依存が精神的自立と関連していることからも,娘,母親のそれぞれ対する密着度の高さが否定的な効果をもつものではないことが明らかになった。
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