本研究は、日本人が北米人よりも中心的な対象を注視する度合いが低く、周辺の状況や背景を注視する度合いが高いという注意配分の文化差に対する、日本語による言語表現を聞き慣れることの影響を検討した。談話レベルで、場面についての叙述を中心対象から始めるナレーションを聞く経験をした方が、叙述を背景から始めるナレーションを聞く経験をした場合よりも、雑音を聞きながら場面を見る際も、中心対象への注視時間の割合が高くなった。このことは、日本人が北米人よりも背景を注視する割合が高く、中心対象を注視する割合が低いことに、背景を先に述べるという日本語の談話を聞く経験が影響を与えていることを示唆している。
|