研究課題/領域番号 |
17K04363
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
成本 忠正 東京福祉大学, 心理学部, 准教授 (60434560)
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研究分担者 |
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
沢 哲司 北里大学, 医療系研究科, 講師 (80756768)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視空間性ワーキングメモリ / ADHD児 / 視覚イメージ |
研究実績の概要 |
本研究では、ADHD児と定型発達児のワーキング能力に相違があるのか否かを検討することが目的である。この目的達成にイメージ統合課題を用いた。イメージ統合課題とは、操作と保持が相互依存的に働くことによって達成されるワーキングメモリ課題である。これまでのワーキングメモリ課題とは、記銘した情報を保持しながら同時に別の処理を実験参加者に求めるものであり、それぞれ独立した課題達成の遂行が求められた。平成30年度では、イメージ統合課題を用いてADHD児(精神障害の診断と統計マニュアルに基づき診断された児童)と定型発達児のワーキングメモリ能力を比較検討した。実験に参加したADHD児(平均年齢10.2歳)と定型発達児(平均年齢10.3歳)はそれぞれ25名であった。ADHD児は混合型ADHD児と不注意優勢型ADHD児であった。両群の児童は実験前の知能検査において知能指数が85以上であることが確認されている。 イメージ統合課題に加え、視覚短期記憶課題も実施した。実験の結果は、視覚短期記憶の成績に統計的な差は認められないことを示した。この結果により、本研究に参加したADHD児の記銘および一時的保持に問題はなく、注意能力は定型発達児と相違はないと考えられる。ゆえに、イメージ統合課題における両群の成績の違いが認められた場合には、不注意による記銘と保持の弱さではなくワーキングメモリ能力の違いであると言える。実際に、イメージ統合課題におけるADHD児の成績は定型発達児よりも統計的に低い結果であった。これにより、操作(処理)と保持が相互依存的に働くことによって達成されるワーキングメモリの能力は、ADHD児の方が弱いと考えられる。 本研究で得られたこの新たな知見は、ADHD児の創造的思考に必要となる相互依存的に機能する視覚イメージの操作と保持が定型発達児より弱いことを示しており、彼らの教科学習成績の低さに影響を及ぼしている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度では、ADHD児と定型発達児のワーキングメモリ能力を正確に測定することが目的であり、この目標は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ADHD児のワーキングメモリ能力を向上させるパソコン用トレーニングプログラムを完成させる。このプログラムはイメージ統合課題をトレーニング用に改良したものになる。トレーニング期間は、6か月から8か月間を考えている。トレーニングは福井県にある平谷こども発達クリニックで実施する予定である。すでにクリニックの院長である平谷美智夫先生の許可を得ている。また、ADHD児および定型発達児の選定および実際のトレーニングスタッフの確保も行っていただく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会での研究成果報告を2回予定していたが、データ収集および分析に遅れが生じてしまい、2回目の参加が間に合わず、1回のみの報告となった。支出を予定していた旅費および学会参加費に助成金を利用しなかったことから次年度使用額が生じた。次年度では、複数の国際学において研究成果報告を行う予定である。
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