今年度の研究成果として次の2つが挙げられる。第一に、幼児における仲間関係の特徴について文献的検討を行い、その内容を著書にまとめた(分担執筆)。その中で、幼児の仲間間の親密性に関する研究を3 つの視点で概観し、最後に仲間関係の特徴を「からだ」の視点で捉えることの意味、特に幼児の「手つなぎ」行動への着目について提案した。「手つなぎ」行動の発達的検討を行った結果について、2024年度の国際学会で発表予定である。第二に、5歳児におけるリーダー決めの話し合いについて事例的検討を行った。その結果、リーダーになりたい願望が強い5歳児・S太が、リーダー決めの話し合いを重ねる中で、自他の認識を変化させていく発達的特徴について明らかにした。 研究期間全体を通じた研究成果については、次の3点が挙げられる。第一に、幼児への縦断的なインタビューにより幼児期における「特定の友だち」関係の認識について検討した。その結果、3歳児は「遊ぶ友だち」の人数が相対的に少なく、時間経過の中で変化しやすいが、4歳後半から5歳前半にかけて継続性や相互選択性が見られることなどを明らかにした。第二に、「仲間づくり活動」の取り組みとして、グループでの話し合い活動につ注目し、4歳児の「グループの名前決め」や5歳児の「リーダー決め」などについて検討し、話し合いに見られる幼児の育ちの様子を明らかにした。第三に、「親密な友達」の就学後における関係・認識の継続性について、卒園後に保護者へのアンケートを実施した。その結果、卒園3か月後では、「年長時の仲良し」と実際に一緒に遊んだ内容だけでなく、その友だちがどうしているか気にかける、一緒に遊びたい願望を語るなど、「年長時の友だち」への思いが継続していることなどが示唆された。 以上の知見から、幼児期の集団づくりの保育・教育的意義について提言を行うことを目指している。
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