研究課題/領域番号 |
17K04369
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 子どもの表象 / 子どもの権利 / 子どもの研究倫理 / 子どもとの協同 / 映像発達研究法 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、引き続き、目的1、社会文化的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を検出し理論的精緻化を行う目的で、(1)長期縦断フィールド観察映像の表象分析、(2)国内外の公共放送映像資料による子どもの表象分析を行った。(2)は外国の映像資料に関して、昨年度は児童の権利条約30年を記して国連児童の権利イノチェンティ研究所主催で記念映像祭が開催され参加したため、子どもの映像および権利研究の方法論的示唆を得た。特に研究方法の変革を求めて子どものドキュメンタリーという表現方法が新たに開始された事は、本研究の目的とも符合し貴重な機会を共有できた。その後米国およびカナダ文化人類学会の共催学会に参加し、子どもの映像媒体を社会文化的に考察するための文献資料を収集することが出来た。 目的1の達成度は文献研究を含めデータおよび理論化ともに参考になる資料が見つかった。本研究の理論的な枠組み構築にとって必須なのでさらに検討を押し進めていく。 目的2、昨年に引き続き子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを検討し、子どもと協同する研究のモデル化によって倫理問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指した。(1)子どものフィールド観察映像、(2)公共放送、ドキュメンタリー映像など既成映像、両者における発達の記述を 子どもの権利条項と関係づけて精査した。国連児童の権利研究機関でも新しい研究成果が出ており、文献研究を推し進めることができた。その結果は学会発表にまとめた。目的2の達成度は昨年に引き続き高かったが、11月開催の児童の権利条約制定30年の記念行事の成果は今年度内には間に合わないため、研究期間の延長を希望した。延長が可能になったので今後さらに、子どもの表象と権利、研究倫理との関係を一層探究し、文化差も検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度の研究進捗状況は、全体として順調だった。しかし当初の計画で時期の予想ができなかった児童の権利条約制定30年記念行事が11月だったため、年度内にその成果を十二分に利用することが出来ないという外部の事情で遅延を余儀なくされた。1年の延長によって、研究成果は一層期待できるので、この遅延は研究上はむしろ好ましいと考えている。 そこで、今年度も予想以上に達成できた点(子どもの権利と研究倫理の関係分析、文献資料開拓)を軸にして、当初計画の未達成部分を補償する方法を推し進め、次年度の最終成果に向けて努力していく。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に準じて同様に行いたいが、令和2年度は予想外の新型コロナ禍による影響が避けられないため、そういった状況下で最善を尽くすと言うほかはない。目的1、社会文化歴史的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を見出し最終的理論化を行う。(1)長期縦断フィールド観察映像から子どもの表象分析を行う。(2)国内外の公共放送及びドキュメンタリー映像資料により子どもの表象分析を行う。海外の映像資料分析:多様な映像資料を多く閲覧できる映像祭(国際ドキュメンタリー映像祭など)がオンライン開催される可能性があるので、むしろ居ながらにして多くの資料を得ることが出来る可能性もある。特に英国、カナダなどの映像アーカイブズに赴く事は出来なくても、オンラインで資料を得る可能性も検討する。 2、子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを提起し、子どもと協同する研究のモデル化によって子どもの 倫理的問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指す。上述の(1)子どもの長期縦断フィールド観察映像、(2)国内外の公共放送、ドキュメンタリー映画など既成の映像、両者における発達の記述を子どもの権利条項のうち子どもの研究倫理と関係の深い18条項に関係づけて精査する。イノチェンティ研究所を中心に子どもの権利条約30年を記して行われた催し後の総括論文や展望資料の収集・分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越した使用額は602,730円で、研究費を残した主な理由は以下のようである。令和元年度は児童の権利条約制定30周年で、国連イノチェンティ研究所主催で子どもをめぐる映像祭が10月に開催され、本研究計画上貴重な情報収集の機会となるため参加した。さらに児童の権利条約制定30周年記念行事が11月にジュネーブで行われ(非参加)、その成果の出版や評価の公表が行われたのちにそれを利用するには半年ほど必要であり、それらを参照した上で本研究のまとめを行いたいと希望した。そこで本基金研究の本来の最終年度である令和元年度を延長し令和2年度にする延長願いを提出し許可された。そこで令和2年度の使用計画は、学会参加を含めた文献資料情報収集を主とする。
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