研究課題/領域番号 |
17K04369
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの表象 / 子どもの権利 / 子どもの研究倫理 / 子どもとの協同 / 映像発達研究法 |
研究実績の概要 |
令和2年度は引き続き、目的1、社会文化的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を検出し理論的精緻化を行う目的で、(1)長期縦断フィールド観察映像の表象分析、(2)国内外の公共放送映像資料による子どもの表象分析を行った。コロナ禍の中、目的1の達成度は文献研究を含めデータおよび理論化ともに参考になる資料が得られにくい状況となり、本研究の理論的な枠組み構築にとって必須なのでさらに1年の検討を押し進めていく必要が生じた。 目的2、引き続き子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを検討し、子どもと協同する研究のモデル化によって倫理問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指した。(1)子どものフィールド観察映像、(2)公共放送、ドキュメンタリー映像など既成映像、両者における発達の記述を子どもの権利条項と関係づけて精査した。コロナ禍で国連児童の権利研究機関での新しい研究成果が滞り、文献研究を推し進める上で困難が生じた。このような事情以前に、目的2の達成には、令和元年晩秋の児童の権利条約制定30年の記念行事の成果を待つ必要があったため研究期間の延長を希望していた。延長が可能になったので令和2年度にさらに、子どもの表象と権利、研究倫理との関係を一層探究し、文化差も検討していた。しかしコロナ禍の中、欧米の期待する文献の成果や発行が遅れ、本研究も同様に減速せざるを得ず、さらに研究期間を1年延長し、本来の総括を令和3年度に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度の研究進捗状況は、全体として順調だった。児童の権利条約制定30年記念が晩秋だったため、その成果を待って本研究を1年延長した。しかし令和2年度のコロナ禍はまず欧州の研究に影響を及ぼし期待する研究成果が得られず、テーマがコロナ禍が与える子どもの権利問題になった。このような事情は本研究の進捗にも影響を及ぼしたため令和3年度への再延長を行い、子どもの権利と研究倫理の関係分析、文献資料開拓を軸にして、当初計画の未達成部分を補償する方法を推し進め、次年度の最終成果に向けて努力していく。 以上のような困難な状況の中で、逆に子どもの権利と子どもの映像発達研究法に関しては、新たな視点からの検討の糸口を見出すことが出来た。この点はこの研究課題領域自体の守備範囲の広さと応用力による成果であり、本研究の最終成果にも反映させていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に準じて同様に行おうとした令和2年度は予想外の新型コロナ禍による影響が避けられず、最善を尽くしたものの足踏みとなった。令和3年度は最終年度として、目的1、社会文化歴史的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を見出し最終的理論化を行う。(1)長期縦断フィールド観察映像から子どもの表象分析を行う。(2)国内外の公共放送及びドキュメンタリー映像資料により子どもの表象分析を行う。海外の映像資料分析:多様な映像資料を多く閲覧できる映像祭(国際ドキュメンタリー映像祭など)がオンライン開催される可能性があるので、多くの資料を得ることが出来る可能性もある。特に英国、カナダなどの映像アーカイブズに赴く事は出来なくても、オンラインで資料を得る可能性も検討する。 2、子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを提起し、子どもと協同する研究のモデル化によって子どもの倫理的問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指す。上述の(1)子どもの長期縦断フィールド観察映像、(2)国内外の公共放送、ドキュメンタリー映画など既成の映像、両者における発達の記述を子どもの権利条項のうち子どもの研究倫理と関係の深い18条項に関係づけて精査する。イノチェンティ研究所を中心に子どもの権利条約30年を記して行われた催し後の総括論文や展望資料の収集・分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越した使用額は585,268円で、研究費を残した主な理由は以下のようである。令和元年度は児童の権利条約制定30周年で、国連イノチェンティ研究所主催で子どもをめぐる映像祭が10月に開催され、本研究計画上貴重な情報収集の機会となるため参加した。さらに児童の権利条約制定30周年記念行事が11月にジュネーブで行われ(非参加)、その成果の出版や評価の公表が行われたのちにそれを利用するには半年ほど必要であり、それらを参照した上で本研究のまとめを行いたいと希望した。ところが令和2年度は欧州で猛威を振るったコロナ禍で期待する資料の発行が無く、テーマもコロナ禍の子どもの権利問題に代わり、本研究の趣旨とのずれが生じた。また本研究自体もコロナ禍の遠隔授業等に阻まれ遅延を極めた。そこで本基金研究の最終年度を再延長し令和3年度にすることが許可された。そこで令和3年度の使用計画は、学会参加を含めた文献資料情報収集を主とする。
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