令和3年度は、引き続き、目的1、社会文化的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を検出し理論的精緻化を行う目的で、(1)長期縦断フィールド観察映像の表象分析、(2)国内外の映像資料による子どもの表象分析を行った。(2)の結果、外国の映像資料に関して、2019年に児童の権利条約30年を記して国連児童の権利イノチェンティ研究所主催で開催された映像祭に参加したが、今年度は二度目の映像祭に遠隔参加することが出来、子どもの映像および権利研究の方法論的示唆を得た。研究方法の変革を求めて子どものドキュメンタリーという表現方法が新たに開始され、今回さらに発展を見た事は、本研究の目的と合致した。その後米国文化人類学会に遠隔参加し、子どもの映像媒体を社会文化的に考察するための資料を得ることが出来た。 目的1の達成度は文献研究を含めデータおよび理論化ともに重要資料が見つかり、本研究の理論的構築に役だった。 目的2、昨年に引き続き子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを検討し、子どもと協同する研究のモデル化によって倫理問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指した。(1)子どものフィールド観察映像、(2)公共放送、ドキュメンタリー映像など既成映像、両者における発達の記述を、子どもの権利条項(54条項中、研究倫理との関連の深い18条項)と関係づけて精査した。今年度は日本の子ども家庭庁構想によって国内の情報交流が際立った年となった。各学会や活動機関、国連児童の権利研究機関でも新しい研究成果が出ており、文献研究を推し進めることができた。目的2の達成度は高かったが、児童の権利条約関連の動きが文献に結実するのは今後であるため本研究でも今後さらに、子どもの表象と権利、研究倫理との関係を精査し報告書にまとめる。
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