研究課題/領域番号 |
17K04372
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
岸本 健 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (20550958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 指さし / 乳幼児 / 養育者 / 身振り / 言語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,乳幼児の指さし産出を促進することによって,乳幼児のその後の言葉の発達を促すことを通し,学齢期に至るまでに生じうる言葉の遅れの予防を目指すことであった。本研究では,①乳幼児の指さし産出を促進する手法を開発すること,そして,②乳幼児の指さし産出が,後の言葉の発達に繋がるかを検証する,という2段構えの計画であった。しかし,コロナ禍に伴い,今年度には②の検討までには至らず,①の乳幼児の指さしを促進する方法に関する検討した。関東の家庭支援センターの1室のポスターや玩具によって装飾し「デコレーテッドルーム」とした。そして,デコレーテッドルームに入室した1歳齢児とその母親に5分間,過ごしてもらい,両者の行動をビデオカメラにより記録した。記録された映像記録を分析した結果,乳幼児の指さしの頻度のみならず,形態(人差し指だけを伸展させるか,全ての指を伸展させるか)に,母親の指さしが影響していることが明らかとなった。この結果は,乳幼児の指さし産出に養育者の指さしが影響していることを示唆している。換言すれば,乳幼児の指さし産出の促進には,乳幼児自身への働きかけではなく,養育者への働きかけが効果的である可能性がある。 一方で,コロナ禍に観察によるデータ収集を実施できなかったため,並行して収集した幼少期の養育者との関係が成長した後の社会関係にどのような影響を及ぼすかに関するWeb調査について分析を実施し,論文としてまとめた(Kishimoto and Kohsaka, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は,やや小康状態であったとはいえ,依然コロナ禍にあった。このため,乳幼児およびその養育者に対して観察を実施することには慎重にならざるを得ず,研究を進めることが大変困難であった。このため,研究の進捗は遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,コロナ禍の状況を慎重に見極めねばならないが,新規罹患者数の減少に伴い,新たに研究を進められる可能性が高まったと思われる。そのため,まずは,新規に観察の実施を許諾いただける1歳齢児の養育者を早急に募集し,観察を実施する必要がある。特に,今年度には養育者の指さし産出が1歳齢児の指さしを促進する可能性が見出されたことを受け,養育者の指さしを促進する介入を試みることで,養育者の指さしが促進されるのか,それが1歳齢児の指さし産出,さらには,後の言葉の発達に影響するのか,検証していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い,乳幼児とその養育者を観察することができなかったため,本来,養育者に支払う謝金や,研究成果を発表するために必要な経費(英語の論文の校閲にかかる費用,学会発表のために国内外を訪問する上で必要な旅費など)のために研究費を使用する機会がなかった。このため,次年度使用額が生じた。次年度には,コロナ禍の収束に伴い,新たな観察の実施が見込まれる。このため,観察対象となった乳幼児およびその養育者に対する謝金,および,得られた研究成果を国内外の学会,および論文として公表するための費用として,研究費を使用する計画である。
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