研究実績の概要 |
2020年度の実績を以下に示す。 (1) 病気に関する理解の発達を検討したこれまでの研究を,共存モデルにたって整理・再検討し,その成果を著書にまとめた(外山, 2000)。成長,病気,遺伝,死,遺伝,死後の世界に関する認識など,生命に関する現象のいくつかについて,伝統的な発達観である置き換えモデルよりも共存モデルによる説明が妥当であることを議論した。 (2) 病気と死に関する理解の発達を,共存モデルの発達観でとらえることの意義を,乳幼児医学・心理学会第30回大会において大会長講演として発表した(外山, 2021)。さらに,共存モデルの医療実践への応用として,「医療におけるナラティブとエビデンス」をタイトルとする大会シンポジウムを企画した。患者とその家族は病気について納得のいく理解を得ようと、自分なりの「物語」を紡ぐ。西洋近代医学は科学的方法で収集したデータに基づいて病気を診断し治療を行うが,この「科学」はややもすると患者の「物語」を軽んじ,排除しがちである。このシンポジウムでは,患者やその家族による「物語」と医療者の「科学」を相互尊重するために何が求められているかを議論した。 (3) 日本と中国の幼稚園・保育園を対象とした質問紙調査を実施し,新型コロナウイルス感染症の感染拡大前後における,食事場面を中心とした衛生環境,病気・感染予防に関する園側の配慮を検討した。その配慮が園環境のなかでどのように具体化されているかについて検討を行い,日本と中国における身体観,子ども観,保育観との関連で議論し,投稿論文にまとめた。 (4) 保育園の給食当番(配膳活動)場面を観察した映像データを,病気・感染に関する理解の発達の観点から分析した。保育者が幼児に対して,衛生習慣をどのように教えているか,給食当番の経験を積むにつれ,幼児がそれをどのように身につけていくかを検討した。
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