研究実績の概要 |
本研究は,パーソナリティが適応に及ぼす影響について詳細に検討することを通じて,パーソナリティそのものの発達の意味を明らかにしようと試みるものである。そのため,第1にパーソナリティと適応との関連に対する年齢の調整効果,第2にパーソナリティと適応との関連に対する地域の調整効果,そして第3にパーソナリティや適応指標の時代変化について検討することを目的としている。 Oshio (2017, ARP)では,Big Fiveパーソナリティと自尊感情との関連に対して,年齢の調整効果を検討した。1515名の日本人成人を対象にした調査データを分析した。階層的重回帰分析によって,次のことを明らかにした。全年齢において自尊感情に対し神経症傾向は負,外向性,開放性,協調性,勤勉性は正の有意な影響を示した。また神経症傾向と勤勉性については自尊感情に対する年齢との交互作用効果が有意であり,年齢がより若い者のほうが年長の者よりも自尊感情と神経症傾向,勤勉性の結びつきが強かった。この結果は,年齢によってパーソナリティの適応的な側面が異なる可能性を示している。 またOshio, Taku, Hirano, & Saeed (2018)では,レジリエンスとBig Fiveパーソナリティの関連についてメタ分析を行った。論文データベースを検索し30研究を分析に用いた。レジリエンスとの母相関係数は,神経症傾向で-.46,外向性で.42,開放性で.34,協調性で.31,勤勉性で.42であった。また,心理的レジリエンスとエゴ・レジリエンスの結果を分類したところ,神経症傾向と開放性においてエゴ・レジリエンスのほうが心理的レジリエンスよりも関連が強い様子が示された。これらの検討は,パーソナリティと適応の基礎的な知見を提供するものであると考えられる。
|