研究実績の概要 |
全国の2010年出生の第一子505名を抽出し,子どもとその親に,遊びと養育環境についてのウェブ調査を実施した。母親用質問項目は,21世紀出生児縦断調査(厚生労働省)の一部項目,日本での標準化が完了したSDQ(Strength and Difficulties Questionnaire:子どもの強さと困難さアンケート)であった。子ども用質問項目は,小学生用5因子性格検査(曽我, 1999),直近1週間に行った遊びに関するものであった。 データ分析の結果は以下を明らかにした。(1)505名のSDQ平均得点は,日本の10-12歳児童(N=8479)における親評定SDQの平均得点と比較した結果,情緒の問題, 行為の問題, 多動/不注意, 仲間関係,総合的困難さで,有意に高くなった。向社会的行動については有意に低い平均値を示した。総合的困難さ,下位領域のいずれの領域においても,支援が必要と判断される子どもの割合が,日本の標準化データ(厚生労働省)と比較して,明らかに多かった。(2)5因子性格検査の各尺度得点の平均値について,曽我(1999, n=2693)のデータと比較したところ,協調性,情緒性においては有意差がなく,統制性の平均値は高く,開放性,外向性の平均値は低くなった。以上のことから,標準化データと比較すると,親は子どもの困難さを多く認識しており,子どもは自分自身の性格特性を統制性が高く,開放性・外向性が低いと認識しているが,この背景にはコロナ感染症が影響しているのではないかと考察された。 研究室コホートについての調査は実施できていない。
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