研究課題/領域番号 |
17K04383
|
研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
向山 泰代 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (80319475)
|
研究分担者 |
酒井 恵子 大阪工業大学, 教職教室, 准教授 (50306370)
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | パーソナリティ / 擬態語 / 尺度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、性格を記述する擬態語(例:さっぱりした人、ほんわかした人)に着目し、日本における性格認知の過程やコミュニケーションの特徴について、調査やインタビューから得たデータをもとに理論的総括を行うことである。令和1年度の実績は次のとおり。 1.擬態語で測定される性格特性を例示するエピソードの構成:前年度までに、既存資料(女子大学生33名へのインタビュー調査資料)の再分析を行い、その結果を公表した(小松ら, 2017; 向山ら, 2017; 西岡ら, 2018)。これら一連の研究では、ビッグファイブとの関連が低い擬態語特性(緩やかさ、淡白さ、軽薄さ)について検討を行い、3つの擬態語特性の意味内容の特徴を抽出した。この結果をもとに、令和1年度には3つの擬態語特性の意味内容を例示するような9つのエピソードを構成し(3擬態語特性×3エピソード)、質問紙を作成した。 2.エピソード質問紙による調査:上記1で作成した質問紙を用い、3つの擬態語特性を最もよく表現する典型的エピソードを見出すこと、及び先行のインタビュー調査資料の分析結果の妥当性を確認することを目的として、大学生約100名を対象に調査を行い、その結果を公表した(小松ら, 2019)。 3.他の性格理論との関連の検討:ビッグファイブ以外の性格理論や性格概念との関連から6つの擬態語特性の意味内容を明らかにすることを目的とし、大学生約300名を対象にエゴグラム(TEG-Ⅱ)と擬態語性格尺度による調査を実施し、その結果を公表した(向山ら, 2019)。 4.擬態語による性格記述の使用や理解度に関する検討:留学生1名へのインタビュー、及び外国人日本語学習者や障がい者の擬態語学習等に関する文献をもとに、擬態語による性格記述に関する理解度やコミュニケーション上で困難を感じる部分等について探索的に検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存のインタビュー資料の再分析から、6つの擬態語特性のうち特にビッグファイブと相対的に関連の低い「緩やかさ」「淡白さ」「軽薄さ」の3つの擬態語群の意味内容について新たな知見を得て、結果を学会で発表した(小松ら, 2017; 向山ら, 2017; 西岡ら, 2018)。続く研究では、これら知見をもとに作成したエピソード質問紙による調査を実施し、日常での具体的行動と擬態語特性との関連や擬態語による性格理解のあり方についての研究を具体化した(小松ら, 2019)。また、擬態語特性の意味内容を明らかにするため、ビッグファイブ以外の性格理論(エゴグラム;TEG-Ⅱ)との関連についても調査し、分析・考察を進めた(向山ら, 2019)。これらの研究結果の一部を学会で発表し、次年度以降にも学会での発表や論文として成果を公表する準備を進めている。 以上は、本研究が目的とする、性格を記述する擬態語の意味や理解の過程を調査やインタビューを通じて明らかにし、擬態語という観点から、日本における性格認知とコミュニケーションの特徴について理論的総括を行うという目的に沿ったものであり、当初の計画に沿って研究は進展している。ただし、当初は最終年度を令和1年度としていたが、国際学会での成果発表準備と論文化作業を継続するために研究期間を延長したことから、「現在までの進捗状況」の区分は(3)とした。なお、令和2年度は世界的な新型コロナウィルス感染拡大とその防止対策によって研究の進捗にも影響が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、データの収集と分析を継続しつつ、これまでの研究成果を学会発表や論文として国内外に公表することを通じて本研究の理論的総括を行うことを目指す。具体的には、「研究実績の概要」の1で記したとおり、既存のインタビュー資料の再分析から見出された「緩やかさ」「淡白さ」「軽薄さ」の擬態語特性に関する研究成果について、論文化の作業を進展させる。また、「研究実績の概要」の2として記した調査を通じて特定した典型的エピソードを用いて新たな調査を実施し、擬態語による性格認知と対人感情等との関連を検討する。さらに、「研究実績の概要」の3に示した調査で擬態語性格特性の特徴がより明確になったことから、この調査での知見をさらに深化すべく、精神健康調査表(GHQ12)を用いた調査を実施し、精神的健康との関連から擬態語特性の特徴や擬態語性格尺度の測定するものを明確化する。これらの作業と並行して、「研究実績の概要」の4として記した擬態語による性格記述に関する理解度やコミュニケーション上で困難を感じる部分等については文献研究を継続し、異なる文化的背景を持つ個人の擬態語による性格記述の理解度や理解過程について整理する。 なお、令和2年度は世界的な新型コロナウィルス感染拡大とその防止対策によって研究の進捗に影響が生じていることから、上記の計画も当該事態の推移に応じて可能なものから逐次、実施することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究期間の最終年度を令和1年度として、国内学会および国際学会での研究成果の公表や論文化を予定していたが、結果の分析や考察に注力して研究を進捗させることや新たな調査の準備を優先したため、研究成果の公表については令和1年度の計画を一部変更して国内学会での発表のみとした。このため、次年度使用が生じた。国際学会での発表準備と論文化の作業を継続するために研究期間の延長を申請し承認されたことにより、令和2年度に国内外での学会発表や論文化の作業が可能となった。 従って、令和2年度では国内外での成果発表のための学会参加費や宿泊費、論文化のための研究費の使用を計画している。また令和2年度には、これまで収集したデータについてより高度な分析を行うためのパーソナルコンピュータや分析ソフトのための費用、計画中の新たな調査に係る費用が必要となる。
|