研究実績の概要 |
本研究の目的は、性格を記述する擬態語(例:さっぱりした人、ほんわかした人)に着目し、日本における性格認知の過程やコミュニケーションの特徴について、調査やインタビューから得たデータをもとに理論的総括を行うことである。令和3年度は、前年度までの研究成果(以下①~③)を踏まえ、擬態語に特徴的な特性に焦点を当てた研究を継続しつつ、擬態語性格尺度(小松ら, 2012; 酒井ら, 2015)による全国規模の調査計画を具体化した。①既存資料(女子大学生へのインタビュー調査資料)の再分析を行い、ビッグファイブとの関連が低く、擬態語に特徴的な特性(緩やかさ、淡白さ、軽薄さ)の意味内容の特徴を抽出した(小松ら, 2017; 向山ら, 2017; 西岡ら, 2018)。②これら3擬態語特性の意味内容を例示するような仮想エピソード(3擬態語特性×3エピソード)による質問紙を作成した。③この仮想エピソードによる調査結果から、各擬態語特性の典型的なエピソードを特定し、上記①のインタビュー調査資料の分析結果の妥当性を確認した(小松ら, 2019)。 令和3年度は、上記①の調査資料のうち、「几帳面さ」特性について意味内容の特徴を抽出した(西岡ら, 2021)。また、上記②の仮想エピソードのうち、「緩やかさ」ついて調査を実施した。具体的には、「緩やかさ」に関する3つの仮想エピソードに示された行動が、観察者にどのような対人感情、性格認知、評価(付き合いやすさ・望ましさ)を生起させるのか、観察者の性格特性との関連を含めて調査を行った。さらに、擬態語による性格認知に関する知見の拡充と、対象に関する直接情報が少ない事態における性格理解とその関連要因の検討を目的とし、擬態語性格尺度短縮版(酒井ら, 2015)による居住地域や年齢等の異なる対象に向けた調査計画を具体化した。
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