研究実績の概要 |
本研究の目的は、性格を記述する擬態語(例:さっぱりした人、ほんわかした人)に着目し、日本における性格認知の過程やコミュニケーションの特徴について、調査やインタビューから得たデータをもとに理論的総括を行うことである。最終年度である令和4年度は、①ビッグファイブとの関連が相対的に低く、擬態語に特徴的な特性と考えられる「緩やかさ」「淡白さ」「軽薄さ」に焦点を当てた研究を継続しつつ、②擬態語性格尺度短縮版(酒井ら, 2015)を用い、青年期~高齢期までの幅広い年齢層を対象とした自他の性格認知に関する全国調査を実施した。 ①については、女子大学生へのインタビュー調査で得られた事例をもとに「緩やかさ」の性格特性を例示する仮想エピソードを構成し(小松ら, 2019)、質問紙調査を実施した。具体的には「緩やかさ」に関する3つの仮想エピソードに示された行動が、観察者にどのような対人感情、性格認知、評価(付き合いやすさ・望ましさ)を生起させるのか等を、観察者の性格特性と関連づけて検討した(向山ら, 2022; 小松ら, 2022)。 ②については、大規模調査で得た年齢や居住地域等の異なるデータをもとに擬態語による性格認知に関する知見を拡充すること、および対象人物に関する直接情報が少ない事態における性格理解や関連要因を検討することを目的とした。直接交流のない他者について、限られた情報をもとに性格を推測し判断する事態に関連する要因として、年齢や性格等の属性に加え、対人志向性やリーダーシップ、他者の性格理解に関する効力感や他者への関心、対象人物に関する情報量や好感度等を取り上げた。 性格を記述する擬態語についての質的・量的データの分析を通じて、日本における性格認知やコミュニケーションの特徴についての知見が蓄積されつつあり、学会発表と並行して論文化の作業を進め、本研究の成果を国内外に公表していく。
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