研究課題/領域番号 |
17K04389
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研究機関 | 太成学院大学 |
研究代表者 |
篠原 恵 (小高恵) 太成学院大学, 人間学部, 教授 (90321132)
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研究分担者 |
紺田 広明 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60734077)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 娘関係 / 青年期 / 動的因子分析 / 時系列 |
研究実績の概要 |
小高・紺田(2018)は,中学生女子とその母親の3組の母娘ペアデータを用いて日々の母娘関係の構造分析をP技法因子分析により行い,その結果,日々の母娘関係には母と娘それぞれに「母娘の親和的コミュ二ケーションに関する因子」と「娘の自己主張に関する因子」の二つの共通因子が存在することを明らかにした。2018年度はこれらの共通因子を用いて,時間差を入れない方法で母と娘の情動性と母娘関係との関連を動的因子分析のラグ0モデルにより分析を行った。その結果,日々の母娘関係と情動性との関連は,3組に共通する部分もあったが,それぞれの母娘ペアによって独自の関連も認められ,娘の情動性と母の情動性が母娘関係を介して間接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的にも間接的にも関連しない場合など,いくつかのパターンが存在することが明らかとなった。この研究結果の報告は,日本教育心理学会第60回総会(平成30年9月17日 慶応義塾大学)においてポスター発表により行った。 次に研究内容を発展させるために,時間差(ラグ)を入れた動的因子分析を試み,心理測定研究会(平成30年11月24日 京都学園大学太秦キャンパス)にてその結果を報告し,得られた結果から解釈の仕方について議論した。 最後に,日々の母娘関係のみに着目し,時間差を入れたラグ1モデルの分析を行った。その結果,3組に共通した関係として同じ因子の間で母と娘の間で有意な正の関連が認められた。また母の親和因子と母の主張因子の間で有意な負の相関が認められた。さらに母娘関係の時系列の関連についてはその日の母娘関係が次の日の母娘関係に影響していており,いくつかのペアにおいては娘の母への主張が次の日の母への親和的な態度に影響していることを確認した。この研究結果については発達心理学研究に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 3組の母娘ペアデータを用いた,日々の母娘関係と情動性の関連についての多集団同時分析の研究結果を日本教育心理学会第60回総会(平成30年9月17日 慶応義塾大学)において発表することができた。 (2) 心理測定研究会(平成30年11月24日 京都学園大学太秦キャンパス)にて動的因子分析(dynamic factor analysis : DFA)を用いた分析結果について議論をすることができ,発達心理学研究への投稿に繋げることができた。 しかしながら,当初,年内に発達心理学研究に投稿する予定であったが,実際の論文投稿が3月になってしまった。投稿する時期が3月になってしまった理由として,本研究ではいくつかのモデルを検討したが,最終モデルを決定するまでの時間が予想以上に要してしまったことがその理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,日々の母娘関係の前日→当日といった時間的な遅れ(ラグ)を入れた時系列モデルに,母と娘の情動性の変数を組み入れ,日々の母娘関係と情動性の時系列モデルを作成する。2018年度においては,3組の日々の母娘関係の二つの共通因子(「母娘の親和的コミュニケーション」に関する因子と「娘の自己主張」)と母と娘のパーソナリティ特性(情動性)との関連について,時間差を入れない分析と母娘関係の時系列モデルを中心に検討してきたが,ここに情動性の変数を入れることで,日々の母娘関係と情動性がどのように関連するのかということを明らかにすることができると考える。 さらに今後の青年期の母娘関係に繋げるために質的な研究を試みる。具体的には,母親イメージについて記述してもらい,現在の母親イメージが中学生の頃の母娘関係と関連するのかについて検討する。この質的な研究は,量的な研究妥当性の検証に繋げることができると考える。これについては学会で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はパソコンを購入する予定にしていたが,前年度より使用していたパソコンと統計解析ソフトを使用して分析したので,平成30年度は購入しなかった。平成31年度は,質的な研究も行うので新しいパソコンとSPSSのソフトを購入する。
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