研究課題
1.研究の目的:成人中・後期の一般地域住民を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて、高齢期における健康寿命の延伸、および機能障害を抱えた状態での主観的幸福感の維持に影響する心理的・社会的要因を解明する。その際、身体的機能の低下の程度による、心理・社会的要因の影響の差異が存在する可能性を考慮した検討を行う。最終的に、健康寿命の延伸およびサクセスフル・エイジングの実現を目指す心理的・社会的ストラテジーについて、身体的機能の状態を考慮したモデルを構築することを目的とする。2.最終年度の研究:(1)約10年間のフレイル指標の様相における複数の軌跡を解明した論文を学術誌にて発表した。ロバストの状態を維持する群が多いものの、疲労感や低身体活動量など特定の構成要素への該当によりプレフレイルを維持し続ける群や、フレイルが進行する群も存在することを報告した。(2)(1)で得られた各軌跡群になるリスクについて、ベースライン時の独居、孤独感を説明変数とする解析を行い、孤独感がフレイル進行群になるリスクに関連することを見出した。(3)約10年間でのフレイル発症に対するソーシャル・サポートの影響に関する論文を学術誌にて発表した。家族・家族外からの情緒的サポートと手段的サポートが、フレイル発症のリスクを有意に低下させることを報告した。3.補助事業期間全体を通じて実施した研究の成果:高齢期における身体的機能の維持/低下/改善には自尊感情などの心理的要因、および余暇活動、サポートなどの社会的要因が影響し得るが、その影響の仕方は身体的機能の水準により異なる可能性があることを見出した。健常な状態を起点とした場合のみではなく、身体的機能の低下が進行した状態での対応策を構築する上でも有用な知見となると考える。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 108 ページ: -
10.1016/j.archger.2023.104928
The Journals of Gerontology, Series A: Biological Sciences and Medical Sciences
巻: 77 ページ: 2059-2067
10.1093/gerona/glac130
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/ep/