回想法は、抑うつ軽減やQOLにポジティブな効果を持つことから認知機能の改善が示唆され、一般的に認知症患者に対し実施されている。しかしながら、健常高齢者を対象に認知症対策を目的に回想法が実施されることはあまり多くなく、回想の心理的効果を検証するために、記憶や認知的側面に焦点を当てた研究は少ない。そこで、健常成人を対象とした 予備的な研究を実施したところ、認知機能及び記憶検査において改善が認められた。 本研究では、回想法が老年期の認知機能に及ぼす効果について検証した。 実施方法としては、心身共に自立している健常高齢者を対象者にグループ回想法を実施し、グループ回想法による介入期間を挟んで、①研究開始前、②研究実施中、③研究終了後に認知機能及び記憶と抑うつ尺度による測定を合計三回実施し、介入の効果を検証した。評価項目に関しては、認知機能、記憶、抑うつ尺度を用いた。データ収集を目的とした調査は、所属機関による倫理審査を経て2017年度より開始し2020年3月まで継続したが、その後新型コロナウィルスによるパンデミックの影響の為中断し、2022年度に再開、その後終了した。その結果、グループ回想法に参加した群は統制群に比して、介入後に記憶検査における改善がみられた。しかしながら、抑うつ検査においては変化が見られなかった。 また、標準化された評価項目による計量学的な分析に加えて、グループ回想法で得られた個々のナラティブの内容を多角的に分析した。
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