研究課題/領域番号 |
17K04399
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東海林 渉 東北大学, 医学系研究科, 助手 (00720004)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 糖尿病 / 夫婦 / 家族支援 / 適応プロセス / 医療人類学 / ナラティブ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,NBM(narrative-based medicine;物語に基づく医療)の理念を有する医療人類学的アプローチの視点から,糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,具体的な臨床介入の方法を提唱することであった。平成30年度は,以下の成果を得た。
《成果1》文献をもとに夫婦の適応プロセスを理解するための理論枠組みを検討した。具体的には,糖尿病患者の家族・夫婦に対するアプローチ方法および家族介入研究の成果を整理し,糖尿病患者の個人支援と家族支援について,支援パラダイムの捉え直しを行なった。文献の詳細な検討から,糖尿病を抱える患者と家族の支援の文脈では,糖尿病のケアの場に「患者」だけでなく「家族員」も含めて考える「家族全体をサポート対象と考える支援体制」が求められることが明らかになり,糖尿病を「個人の病い」と捉える視点から「家族の病い」と捉える視点へと移行させて心理支援を考えていく必要性が示された。本成果は,家族心理学年報第37号に発表した。
《成果2》糖尿病を有する夫婦の適応プロセスの解明に関する面接調査を実施した。調査対象者のリクルートとして,協力の得られた医療機関における募集およびインターネットによる募集を行った。その結果,夫婦4組から応募があった。研究説明と同意書の取り交わしを行ない,面接調査(適応プロセスに関する聞き取り)を実施した。成果として,夫婦それぞれが糖尿病をどのように認識し,個人としてどのように対処しようとしてきたか,また夫婦としてどのように対処しようとしてきたかについての貴重な「病いの語り」のデータが得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,(2)具体的な臨床介入の方法を提唱することを目的としている。 (1)については,目標症例である4組に対して面接調査を実施し,現在,データを収集および分析を進めている段階であり,順調に進展している。なお本研究ではDepth interview法(対象者に複数回面接を実施する方法)を採用しているため,引き続き「分析→調査(データ収集)→分析→調査(データ収集)→…」を繰り返す予定である。 (2)については,昨年度の成果として開発した支援ツールや本年度の成果である支援パラダイムの整理を踏まえて,糖尿病関連学会や心理関連学会,各種の研究会・研修会において専門家間での情報交換・意見交換等を行ない,糖尿病を抱える家族・夫婦に対する具体的な臨床介入の方法を検討する準備を進めている。 以上,(1),(2)ともに順調に研究を進展できていることから,「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,(1)糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,(2)具体的な臨床介入の方法を提唱することを目的としている。
(1)に関しては,今後,Depth interview(対象者に複数回面接を実施する方法)を実施していく。具体的には,聞き取りしたデータを逐語データとして書き起こし,データを複線径路・等至性モデリング(Trajectory equifinality modeling: TEM =質的分析の一種)を用いて分析する。そして,その結果を用いて4組の夫婦に対して2回目,3回目の面接調査を行なっていく予定である。
(2)に関しては,糖尿病関連学会や心理関連学会,各種の研究会・研修会において専門家間での情報交換・意見交換等を積極的に進め,家族アプローチに関する専門家の意見の集約を行う。必要に応じて,糖尿病を抱える家族・夫婦に対する臨床介入の方法を検討するパネル・ディスカッション等の場を企画する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査面接の実施時期が年度後期になったこと,当初予定していた国際学会への参加を取りやめたことで,予定していた予算消化とならなかった。次年度は請求した助成金の使用に加え,当該年度(平成30年度)に参加予定であった国際会議等への参加を通して予算を執行する予定である。
|