研究課題/領域番号 |
17K04399
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
東海林 渉 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00720004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 夫婦 / 家族支援 / 適応プロセス / 医療人類学 / ナラティブ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,NBM(narrative-based medicine;物語に基づく医療)の理念を有する医療人類学的アプローチの視点から,糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,具体的な臨床介入の方法を提唱することであった。平成31/令和元年度は,以下の成果を得た。
《成果》糖尿病を有する夫婦4組に対して,適応プロセスの解明に関する面接調査を実施した。面接(適応プロセスに関する聞き取り)による質的データの収集と,Pictorial Representation of Illness and Self Measure(PRISM)(Sensky & Buchi,2016)による量的データの収集を行った。得られた量的/質的データを照合し,包括的な分析を行った。糖尿病者のデータに関する分析の結果,糖尿病では心理的な引き受けとともに徐々にSIS(Self-Illness Separation)の距離が縮まる傾向がみられた。あわせて質的データは,時間経過とともに心理的な引き受けのプロセスが進行していく様子を表していた。これまでの研究で,リウマチや多発性硬化症では,心理的な引き受けが進むに従って自分と病いとの距離(SIS)は拡大して表現される(Sensky & Buchi,2016)。しかし本研究の結果から,糖尿病における疾患の引き受け(受容)プロセスは,PRISM上で他の疾患とは異なる形式で表現されることが明らかになった。またこの結果は,糖尿病における病いの引き受け(受容)のあり方が,他の疾患における引き受け(受容)と異なる特徴を有するものである可能性を示唆していると思われた。なお,以上の特徴には糖尿病初期の無症状が影響していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,(2)具体的な臨床介入の方法を提唱することを目的としている。 (1)については,目標症例である4組に対して面接調査を実施し分析を進めている段階である。ただし面接回数については当初の研究計画を変更した。 (2)については,一昨年度の成果として開発した支援ツールや,昨年度の成果である支援パラダイムの整理を踏まえて,糖尿病関連学会や心理関連学会,各種の研究会・研修会において専門家間で情報交換・意見交換等を行なった。以上をもとに,現在,糖尿病を抱える家族・夫婦に対する臨床介入の方法について整理を進めている。 以上,(1),(2)ともに研究を進展できていることから,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,(1)糖尿病を有する夫婦の疾病受容プロセスを解明し,(2)具体的な臨床介入の方法を提唱することを目的としている。
(1)に関しては,現在入手しているデータについて分析を進めていく予定である。
(2)に関しては,糖尿病関連学会や心理関連学会,各種の研究会・研修会において専門家間での情報交換・意見交換等を積極的に進め,家族アプローチに関する専門家の意見の集約を引き続き行う。必要に応じて,糖尿病を抱える家族・夫婦に対する臨床介入の方法を検討するパネル・ディスカッション等の場を企画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の新型コロナウイルス対策に関連する研究活動の自粛により予定していた学会参加等の出張を中止したため,予定していた予算消化とならなかった。次年度は請求した助成金の使用に加え,新型コロナウイルス対策の動向を見ながら研究遂行に必要な物品購入,必要な出張等を行い,予算を執行する予定である。
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