研究課題
・アルコール依存症者と健常成人に対して潜在連合テスト(IAT)を実施して再飲酒や1週間後の飲酒量の予測を試みた研究について、両データの詳細を比較してまとめ直し国際学会で発表した。結果の概要は以下の2点である。①臨床群と健常群のアルコールへの潜在的な選好度(IATにより測定)に有意差は認められなかったが、健常群で常用飲酒しているグループが臨床群と同レベルのスコアを示した。②臨床群では潜在測度のほうが自記式測度よりも再飲酒への予測力が高く、健常群ではその逆の傾向が認められた。また両研究の論文化に着手した。・IATは再飲酒と安定した関連を示すことが明らかになったが、高齢者や認知機能の低下したアルコール依存症者へのスムーズな実施に少々の困難が伴っていた。そこでIAT以外の社会的認知測度を幅広く検討し、AMP(Affect misattribution procedure)という検査がIATより簡便に実施可能でかつ再飲酒予測効果が高くなる可能性を突き止めた。IATに加えてAMPを次回調査の指標として新たに組み込むためにパイロットプログラムを作成し、健常者数名にプレテストを行い実施可能性を確認した。・自身が開発した依存症評価系について、適用依頼のあった他の依存症関連の共同研究(アルコール依存症治療薬効果検証RCT、薬物依存症治療薬効果検証RCT、薬物依存症への短期介入効果検証RCT、薬物事犯者への再犯予防プログラムの効果測定研究)への専門知識提供・統計解析および論文執筆サポートを行った。薬物依存症治療薬効果研究RCTについては、プロトコル論文を英文論文として公刊した。また海外(台湾・フィリピン)より依存物質再使用リスク尺度についての翻訳版作成と当該国での共同研究の申し出があり、作成にあたっての助言を行った。
2: おおむね順調に進展している
・他の研究との兼ね合いや調査実施先となる関連病院のスタッフ入れ替えに伴い、新たに臨床群を対象とした研究のスタートが遅れたものの、その期間を通じて潜在的認知測度の改良について十分な検討を重ねることができた。
・社会認知的手法により測定したアルコールへの潜在的選好度と自記式測度による飲酒リスクが飲酒行動におよぼす影響を様々な観点から検討するため、引き続き健常群や臨床群を対象とした調査を実施する。もし臨床群への調査実施が遅れたり困難化した場合は、健常成人のヘビードリンカーを対象としたウェブ調査の実施も検討する。・認知機能が低下したアルコール依存症患者でも簡便に潜在的態度を測定可能なように改良を図る。具体的には他の潜在的態度検査(AMP等)の導入を検討する。・飲酒行動の予測を最適化する、認知測定と自記式測定の得点の組み合わせ方を検討する。
・臨床群を対象とした研究実施が連携先の病院のスタッフ異動等により遅れていること。次年度にアルコール依存症者もしくはヘビードリンカーを対象にした調査を行う予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
Neuropsychopharmacology Reports.
巻: - ページ: 1-10.
10.1002/npr2.12050.
The Tohoku Journal of Experimental Medicine.
巻: 246(3) ページ: 183-189.
10.1620/tjem.246.183.
巻: 245(4) ページ: 263-267.
10.1620/tjem.245.263.
日本アルコール・薬物医学会雑誌
巻: 53(5) ページ: 182-200