高等教育における学生相談では、学生本人への心理カウンセリングと同時に、教職員や親・家族等との多様な連携・恊働を含んだ重層的な対応が必須となる。齋藤(2015)は自身の一連の研究を集約して、個別相談と教育コミュニティを結ぶ「連働」という包括的概念を提唱しており、本研究はこの概念がさらなる有効性を獲得していくために、全国各地での実践や様々なカウンセラー群の体験と照合し、連携・恊働の対象となる関係者の観点や体験も検証することで、若手・中堅カウンセラーが「連働」の視点と対応力を身に付ける方略確立を目的として実施された。 まず独自に設定した項目からなる質問紙を作成して「カウンセラーを対象とする調査」では立場(専任・特任・非常勤)とキャリア(10年以上・着任間もない)による体験の比較と望まれる研修内容について考察を行った。次いで「教職員を対象とする調査」によって教員と事務職員の体験の相違と必要な研修を検討し、連携・協働が提供する豊かな実りを整理した。さらにこれらの成果を活用して「研修プログラム作成」と「模擬研修の実施」への展開を目指していたが、2019年度終盤から新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大が収まらず、参集してのプログラム実施が困難となったため、参集を要しない事例研究・実践研究を主軸に据えて、コロナ禍での関係者との連携・恊働の展開という新たな観点を加えていくことで、「連働」モデルは関係者とのオンライン交流を含み込む新たな進化を続けている。現任校等での各種研修に研究成果を適宜適用するとともに、実践に基づく学会発表や論文執筆を頻回行い、全国のカウンセラーと協力して成書を2冊上梓している。最終年度には新任カウンセラー研修の詳細な検討、教職員研修と学生への教育プログラム(授業・ピアサポート研修等)の比較検討を行い、最終的に学生相談モデルと連携・恊働の連関という大きな見取り図を提示した。
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