研究課題/領域番号 |
17K04408
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
岩藤 裕美 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 研究協力員 (80747741)
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研究分担者 |
青木 紀久代 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10254129)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ひきこもり / 臨床心理学的アウトリーチ |
研究実績の概要 |
自ら支援を求めにくいひきこもりの若者へのアプローチとして、訪問相談は有効な方法であろう。だが、訪問相談はこれまで主に精神保健領域において実施されてきたものであり、ひきこもり者へのアプローチとしては、心理的支援も含めたモデルが必要となると考える。それは、ひきこもりという状態が、医療のみならず、学校や家族にまつわる本人が負ったトラウマの体験や、外に出て行く際の他者から否定・批判されることの怖さ、ありのままの自分を理解してほしいという思いなどの心理的側面にも目を向ける必要があるからである。 そこで本研究では、我々が臨床心理士を中心として行ってきたひきこもり者への訪問支援実践を多面的に評価し、臨床心理学的アウトリーチモデルを提示することを目的とする。臨床心理学的実践の枠組みを構築すると共に、これからの地域支援のあり方にも示唆を与えるものと思われる。 平成29年度の課題は(1)アウトリーチ支援に関する文献調査及び(2)ひきこもりからの回復過程について明らかにすることであった。 (1)については、国内外の文献を収集し、アウトリーチにおける課題の抽出を進めた。(2)については、まず、訪問支援を終了した26事例を基に、支援結果に寄与する要因の分析を行った結果、申込時の年齢が20代前半であることや、学齢期に不登校がみられないこと、本人に発達の問題がある場合にはその診断がついていることが、良好な支援結果へと影響していることが確認された。次に、不登校を経てひきこもりに至り回復に向かった3事例を基に、その過程についての質的分析を行った結果、不登校時に相談機関を利用し、良好な相談体験を得ていることが、ひきこもりとなった時に支援を受け入れ、相談員との信頼関係を築く行動へとつながり、回復へ向かうことが示唆された。これらの結果について、日本心理臨床学会第36回大会においてポスターによる発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の本研究の課題として挙げていた、アウトリーチについての先行研究を概観してまとめることがやや遅れている状態であるものの、平成30年度以降の課題としていたアウトリーチ実施後の相談員の評価については、インタビューをすでに実施し進めている状態である。そこで(2)の区分であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の課題は以下の3点である。 (1)アウトリーチ支援に関する文献についてレビューをまとめる。 (2)利用者(本人)の支援評価の分析:訪問相談を受けてどうだったのか、どこで変化があったのかについて分析する。 (3)相談員の支援に対する評価の分析:訪問相談を行ってどうだったか、5回の面接の枠組みをどのように組み立て、他機関に本人をつなげていくのか、そこでの工夫などについてグループインタビューを行い、分析・評価する。 平成29年度の課題であった回復過程については、不登校を経ずに大学に進学後や就職後にひきこもりになった事例を基に分析を行った。米国心理学会第126回大会(於:サンフランシスコ)にて発表する予定である。
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