本研究の目的は、研究代表者らが行ってきた臨床心理士を中心としたひきこもり本人や家族へのアウトリーチ支援についての多面的評価を行い、ひきこもり者への心理臨床的アウトリーチ支援モデルを提示することである。具体的な評価は、①ひきこもり者が外に向かう回復過程についての分析を行うこと、②支援に対する利用者(ひきこもり本人)の評価を分析すること、③支援を行ったことに対する相談員(臨床心理士)の評価を分析すること、の3側面から行った。①では回復に向かうための他機関への照会において、不登校経験の有無によって選択機関が異なることが示唆された。②では、他機関への照会の際の相談員の同行支援の有用性と共に、訪問回数に制限を設けていたことがひきこもり者の動きを促す要因となった可能性が示された。さらに③では、実践についての概ね良好な評価と共に、「ケアの双方向性」(メイヤロフ、1987)が相談員を支え、「省察的実践者」(ショーン、2007)として相談活動にあたった相談員のありようが示された。 最終年度は、先行研究のレビューをまとめ、ひきこもり者を対象としたアウトリーチ支援の課題について検討した。その結果、ひきこもり本人からのインフォームド・コンセントを得ることやプライバシーの保護等の臨床倫理を遵守すること、また家族支援をいかに取り入れるかということが課題として挙げられた。さらに、臨床心理学的アウトリーチという点を鑑みると、臨床の枠組みをいかに構築するかが課題であることが考えられた。それをふまえて、上述した評価結果を基に修正点を報告書にまとめ、ひきこもりの若者へのアウトリーチ支援の一つの枠組を提示した。
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