研究課題/領域番号 |
17K04410
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 恵 北陸先端科学技術大学院大学, 保健管理センター, 准教授 (10416183)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本人学生と留学生 / ストレス / レジリエンス / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
平成29年度は,留学生を含む大学生のストレスを規定する要因を解明するため,まず予定どおり4月の定期健診における質問紙調査が完了した。研究対象913名のうち670名が受検し,629名よりデータの研究利用について同意を得た。このうち欠損値のない565名(日本人学生308名,留学生257名)について検討したところ,日本人は東アジア出身留学生より有意にストレス度が高いことが示され,先行研究の知見が再現された。また,留学生のみについて日本における滞在期間・日本語力を統計学的に調整して解析した場合,東アジア出身留学生は,東南アジアおよび南アジア出身留学生よりも有意にストレス度が低いことが示された。さらに,日本人学生・留学生のいずれにおいても,経済状況がストレス度に影響を及ぼしていることが示された。また,日本人学生は東アジア・東南アジア・南アジア出身留学生と比べて,レジリエンス(精神的回復力)の「肯定的未来志向」が有意に低かったが,レジリエンスのスコアを統計学的に調整して解析すると,ストレス度の国籍による差は見られなかった。 平成28年4月入学の新入生を平成29年4月調査で追跡した縦断的検討では,日本人学生は東アジア出身留学生よりも有意に高いストレス度を示した。また,留学生については,東南アジア出身留学生は東アジア出身留学生よりもストレス度が高い傾向にあった。 これまでの知見を総合すると,横断的・縦断的検討のいずれにおいても,日本人学生は東アジア出身留学生と比較して有意にストレス度が高いという知見は一貫して認められており,東アジア出身留学生は留学生全体の中でもストレス度が低い傾向にあることが確かめられた。この点は今後の研究においても仮説のひとつとして維持することが妥当と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画は,(1)4月実施の質問紙調査において大学生のストレスの規定要因を横断的に検討すること,(2)(1)のデータを平成28年4月調査のデータと連結させ,縦断的に検討すること,(3)10月調査において唾液中バイオマーカーをストレス度の指標として新たに追加して検討すること,(4) 日本心理学会第81回大会(2017年9月)において「高等教育における学生支援(2):国際化をめぐる諸課題」を企画し,将来の課題と可能性について議論することであった。(1)(2)(4)については予定どおり完了しており,(2)については成果発表も終えている。(3)については,平成30年度の研究の予備的研究の位置づけでサンプル数も30名と少なく予定していたため,この分を平成30年4月調査に併せより多くのサンプルで検討した方がその後の研究の強固な仮説構築のために良いと考えられたため,平成30年度に繰り越すこととした。以上より,全体としておおむね計画どおりに進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はまず4月の調査において平成29年4月と同様の質問紙調査を行い,レジリエンスを含めた横断的・縦断的検討を行う。同時に,一部の対象者(目標60名)において唾液中バイオマーカーの測定を行う。先述のとおり平成29年度に確保していたバイオマーカーの測定を業者に依頼するための予算を執行していないため,この分を平成30年度で執行する予定である。また,研究成果発表を継続するとともに,調査研究をもとにした介入プログラムの検討も開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,平成29年10月から唾液中バイオマーカーの測定を開始する予定で,専門業者に測定を依頼するための予算を「その他」で30万円分確保していたが,平成30年度にその分をまわすこととしたこと,「物品費」として唾液検体を冷凍保存するためのフリーザーを購入したが,想定よりも安価で購入することができたことなどにより,平成30年度への繰り越し金が発生した。 これらの予算は,平成30年度にて執行予定である。
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