研究課題/領域番号 |
17K04413
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 靖恵 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90235763)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スーパーヴィジョン / 心理アセスメント / 臨床心理士指導者養成 / 心理療法 |
研究実績の概要 |
(研究1)心理アセスメントのスーパーヴィジョンに関する現状と課題の実態把握を継続的に実施しているものであるが、2019年度は特に精神分析的な視点をもとにして、調査も進めていくことを試みた。従って、関連の学会や協会での「スーパーヴィジョン」「アセスメント」にかかわる研修会等に参加をして、実態把握に務めてきた。 2018年度の日本家族心理学会第35回大会でのワークショップにおける、家族の心理アセスメントの実践について、講義終了後に参集された臨床心理士、家族心理士、そのほかの心の支援にかかわる専門家を対象に、幅広い経験者層から、心理アセスメントのスーパーヴィジョン経験に関する全国的な実態調査を実施した結果の分析を行った。 (研究2)日本ロールシャッハ学会第23回大会において、連携研究者(高瀬由嗣・橋本忠行)らと共に「心理アセスメントのスーパーヴィジョン」における独自のプログラムを検討するために、指導者向けのワークショップ「心理アセスメントの教育とスーパーヴィジョン」を企画、実施した。多くの指導者から、心理アセスメントのスーパーヴィジョンシステムに関しては、実習先の現場とのタイアップが必須であり、大学での指導との滑らかな連携システムを考案していくことの重要性が見出された。また当該学会においても会員向けアンケートに際して、こうしたスーパーヴィジョンに関する項目が付与された。その分析結果からも、継続的な心理アセスメントのスーパーヴィジョンを希望する声の高さが立証された。 (研究3)多領域に渡る心理臨床実践活動(心理アセスメント、心理面接、心理的地域援助活動)の特徴に応じた心理アセスメントのスーパーヴィジョンシステムの総合的検討については、2019年度日本ロールシャッハ学会主催研修会でも幅広い検討がなされたことに寄与できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度実績としては、前年度実施したアンケートの分析を行い、討議の機会を得ることができた。総合的な検討は、前年度同様に最終年度まで継続的に行っていきたい。とりわけ(研究3)については、2019年度開催された日本ロールシャッハ学会第23回大会ワークショップでの幅広い検討が可能となり、各地から参集した指導者から実践現場とのつながりを、どう設けていくかにつての丁寧な討議が可能であった。 さらに、同学会主催の研修会においても、心理アセスメントの実践に関する幅広い討議がなされた。これをふまえて、2020年度の日本ロールシャッハ学会主催研修会においては、「心理アセスメントのスーパーヴィジョン」に関する講師を担当することになり、そこでさらに参加者間の討議から知見の拡充が期待できる。 加えて、2019年度には、日本精神分析協会 精神分析的精神療法家センターが設立されることとなった。心理療法の前提となる心理アセスメントの位置づけも重視されることになり、本研究の意義も再確認できた。 これをふまえて、2020年度は、4月末から5月初めにシドニーにて開催される国際精神分析協会主催のアジアパシフィックカンファレンスにおいて、情報収集と討議を行う予定で準備を進めることができた。 さらに、国際的シンポジウムについては、2020年度7月開催予定であった国際ロールシャッハ法及び投映法大会が、2021年度開催となったため、そこでの成果発表を行うことを視野においている。こうした事情から、研究機関延長も視野に入れ、予算を次年度に持ち越す決断を行ったが、研究の遅れという意味ではないことを添えておく。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、本研究の最終年度であり、すべての研究の発表を企画していた。 ところが、まず、(研究1)の成果発表と共に、(研究2)(研究3)の成果発表と拡充を目的に実施予定であった日本ロールシャッハ学会主催研修会(2020年7月5日愛知にて開催予定)が、新型コロナウィルス感染防止のため、2021年7月に延期とされた。さらに、(研究2)(研究3)の国際的資料集を目的として参加予定であったシドニーにて開催される国際精神分析協会主催のアジアパシフィックカンファレンスが同上の理由で中止とされた。こうした事態の中、所属大学での新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う活動制限レベルが引き上げられ、新たな研究をしばらく見合わせざるを得なくなった。 本研究は、4つの研究が単純にステップアップして進められるだけではなく、それぞれの要素が次の課題を明確にし、往還的に進められていく予定であったこと、心理臨床領域が守秘義務を遵守して検討を重ねていく特殊性から、オンラインでの調査やシンポジウムは難しい。現在は、連携研究者、研究協力者らとオンラインでのミーティングを重ねている。 2020年度には、(研究4)の目的遂行のため国際シンポジウムを開催し、各領域の心理アセスメントにおけるスーパーヴィジョンのニーズの違いを踏まえ検討予定であったが、今年度中に国際的なシンポジウムの開催は困難であり、2021年度に持ち越さざるを得なくなった。従って、2021年度7月スイスにて開催予定の第23回国際ロールシャッハおよび投映法大会において、討議と成果発表を同時に実施すべく、目下のところはシンポジウムを企画して、米国のシンポジスト候補者らと討議を重ねて行くこととする。 世界的な災禍により、延期にはなるが、国際的な水準にも鑑みながら国内事情に見合った心理アセスメントのスーパヴィジョンシステム構築の完成を目指していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度開催予定の本研究成果発表としての国際シンポジウムを2020年度開催の国際精神分析協会主催アジアパシフィックカンファレンス(シドニー)における討議、それをふまえて2021年度開催予定の国際ロールシャッハ及び投映法学会(ジュネーブ)で、行いたいと考えたため。 特に後者の国際学会は(本来2020年開催予定であったが、2021年度が、本投映法の世界への発信100年となる記念のため、開催が一年延期となった。 この際に、登壇予定の研究代表者ならびに連携研究者らの支出を検討した結果、次年度支出計画とした。
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