研究課題/領域番号 |
17K04416
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
新井 肇 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60432580)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 初任者教員 / バーンアウト / メンタルヘルス / サポートプログラム / 学校の人間関係 / 職場不適応 / 学習する組織 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、前年度に分析を行った小・中学校初任者教員特有の職務ストレッサーとバーンアウトとの関連性等に関する分析結果(同僚間のサポート体制の充実を図ることと個人のレジリエンスを高めることが、初任者教員のバーンアウトを抑止する効果をもつ)と、前年度に引き続き今年度実施した小・中学校新人教員(勤続2年以内、各5名)を対象とする半構造化面接に基づくTEMアプローチに依拠した分析結果(初任時の教職への意欲喪失、職場不適応、離職意思など、バーンアウト状態に陥る心理的・社会的要因として、授業以外の業務の負担と多忙、特に保護者対応の困難性及び中学校における部活動指導の困難性、職場のサポート体制の欠如による孤立感等が共通して抽出された)とを総合し、職場の同僚性を高めることに重点を置いた、学校組織に働きかける小・中初任者教員のためのメンタルサポートプログラムを策定した。 プログラムの策定にあたっては、ロンドン大学大学院における初任者教員へのメンタリング-コーチングの調査結果、及び、オランダにおける学校組織改善に関する調査結果に基づき、学校が「学習する組織」となることによって初任者教員へのメンタルサポートが可能になるという仮説に依拠して、プログラムの具体化を図った。 そのプログラムを協力を得られた学校及び教育センター等で試行する過程において、コロナ禍の影響で十分に実施することが困難な状況に陥ったため、効果検証を行うところまでには至らなかった。令和3年度において、オンラインによる研修等も含めて、さらに試行を重ね、効果検証に基づくプログラムの精緻化を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質問紙調査及び聞き面接調査に関しては調査結果の分析を行い、初任者教員がバーンアウトに陥る心理的・社会的要因及び危機と回復のプロセスの共通性を抽出することはできた。また、ロンドン大学大学院のメンタリングコーチングの調査(平成31年度に予定した再調査は新型コロナ感染症の蔓延により中止のやむなきに至ったが)、オランダでの学習する組織論に基づく学校組織改善の調査を実施し、その結果についての一定のまとめを行うことはできた。 以上の調査の分析結果に基づき、メンタルサポートプログラムを策定し、平成31(令和元)年度後半より試行を始めたところであるが、同年度末からの新型コロナ感染症の蔓延により、学校や教育センター等でのプログラム実施が困難になり、現在も試行の積み重ねとその効果検証が進められない状況に陥っている。 令和3年度において、策定したプログラムの試行(オンライン実施等も含め)と効果検証を進め、その結果に基づき、初任者教員に対するメンタルサポートプログラムの精緻化を図り、研究のまとめを行うことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症蔓延の影響で、学校や教育センター等でのプログラム実施が困難な状況が続いてきたため、これまでの質問紙調査、面接調査、ロンドン大学大学院でのメンタリングコーチング調査、オランダでの学校組織改善に関する調査結果を総合して策定した「初任者教員に対するメンタルサポートプログラム」を、令和3年度において、教職員が少人数の学校での実施したり、オンラインを活用してプログラムを実施したりするなどの方法により、可能な範囲で試行を重ね、効果検証を行う。 そのうえで、プログラムの精緻化を図り、研究の総括として報告書をまとめ、学校教育現場及び教育行政機関に実効性のある提案を行うことをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロンドン大学大学院のメンタリングコーチングの再調査(平成31年度、及び令和2年度)を予定したが、新型コロナ感染症の蔓延により中止のやむなきに至り、また、策定した初任者教員に対するメンタルサポートプログラム試行のために予定した学校訪問調査や教育委員会等の訪問調査を実施することができなかった。令和3年度においては、ロンドン大学大学院への再調査は断念するが、プログラム試行のための国内旅費、及び試行したプログラムの効果検証のためのデータ入力費用等が見込まれる。また、令和3年度が最終年度となるため、報告書作成のための資料収集費、印刷費用等についての支出が見込まれる。
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