研究課題/領域番号 |
17K04418
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
清水 寿代 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90508326)
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研究期間 (年度) |
2018-02-28 – 2023-03-31
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キーワード | 社会情動的スキル / 感情理解 / 抑制機能 / 幼児 / 媒介要因 / 調整要因 / 縦断研究 |
研究実績の概要 |
幼児の問題行動を抑制するための重要な要因となる「社会情動的スキル」は,“表情・状況から他者の喜び,怒り,悲しみ等の感情を適切に推測できる感情理解力”及び“自己の感情や行動を状況に応じて適切にコントロールする抑制機能”との関連が指摘されている。しかし,①社会情動的スキルの発達と感情理解力及び抑制機能との因果関係を明確にした研究や②幼児期の発達の宿命である「個人差」に焦点をあてた研究は少なく,問題行動の予防策の立案に曖昧さを残している。そこで本研究では,社会情動的スキルを縦断的に調査し,感情理解力及び抑制機能との因果関係を明確化し,発達の個人差を考慮した発達促進要因を検討することを目的とした。 今年度は,平成30年度から実施している調査を含めた4時点の調査をまとめて交差遅れモデルを用いた共分散構造分析を行い,上記の①に挙げた点に関して,社会情動的スキルの発達に感情理解及び抑制機能がどのように影響するかを検討した。 1回目(Time1:T1)から4 回目(Time4:T4)の調査で得られた感情理解,抑制制御,社会情動的スキルをモデルに投入し,交差遅延モデルによって因果モデルを構成した。具体的には,1 回目から 2 回目への全変数間,2 回目から 3 回目への全変数間,及び 3 回目から 4 回目の全変数間にパスを引き,同一変数については,1回目から 4 回目へのパスも引いた。その結果,T1 の感情理解から T2 の抑制制御,T1 の抑制制御からT2 の感情理解,T1 の社会情動的スキルから T2 の感情理解へのパスが確認された。また,T3 の感情理解から T4 の抑制制御,社会情動的スキルへのパスと,T3 の社会情動的スキルから T4 の抑制制御へのパスが確認された。 この結果から,幼児期における感情理解の発達の重要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染が拡大したことに伴い,データ収集が当初の計画よりも大幅に遅れた。これにより,データの統計解析が当初の計画通りに進まなかったことから遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的の1つである感情理解と抑制機能の因果関係については概ね検討できたため,論文にまとめて投稿準備を進める。また,本研究の2つ目の目的である発達の個人差を考慮した発達促進要因の検討を行うために,成長曲線分析による統計解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,当初予定していた学会がオンライン開催となり,参加費や旅費が十分に使用できなかった。同様に,データ収集に遅れが生じたため,データ分析が予定通りに進まなかったため,次年度の使用額が生じた。次年度は,予定していたデータ分析を行うための統計解析ソフトの購入や,学会への参加費に助成金を使用する計画である。
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