研究課題
本研究は,がん医療に従事する看護師の共感疲労(compassion fatigue)予防に焦点を当て行われたものである。その目的は,(1)患者のがんにまつわる出来事およびそれに対する看護師の認知的反応と共感疲労との関連について量的検討を行い,共感疲労のリスク要因を特定すること,(2)その結果をもとにした共感疲労予防に関する教育ツールを開発すること,であった。令和4年度は,(1)の量的研究パートを完遂した。最終的な分析対象者は,関東,関西,四国にあるがん診療連携拠点病院3施設にて勤務する看護師計492名であった。分析の結果,「患者のがんにまつわる出来事」に関する5つのカテゴリーのうち,「医師からの悪い知らせ」が共感疲労に直接的な影響を与えることが示された。さらに,4つのカテゴリー(「治療の難航」,「生きがいの喪失」,「病状悪化」,「医師からの悪い知らせ」)が,「看護師の認知的反応」に関する3つのカテゴリー(「職務からの逃避願望」,「職業的使命感」,「患者・家族への思いやり」)を媒介して,共感疲労に間接的影響を与えることも示唆された。また,これらの知見を元にして,(2)の教育用資材作成を行った。研究期間全体を通して,共感疲労のリスク要因となり得る「患者のがんにまつわる出来事」および「看護師の認知的反応」が特定され,世界的にも未だ研究の少ない,がん医療に携わる看護師の共感疲労予防について,根拠に基づいた知見および教育ツールを提供できる体制が整った。このことは,この領域の看護職の心理的支援システム構築に向けての大きな成果と考えられる。
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