研究課題/領域番号 |
17K04428
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
村松 健司 首都大学東京, 学生サポートセンター, 教授 (00457813)
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研究分担者 |
塩谷 隼平 東洋学園大学, 東洋学園大学人間科学部, 教授 (00453481)
妙木 浩之 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (30291529)
金丸 隆太 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (30361281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域援助 / 児童養護施設離職防止 |
研究実績の概要 |
東京都社会福祉協議会児童部会調査研究部「平成20年度退職者調査まとめ」によれば、児童養護施設スタッフの3年以下退職率は50%を超えている。虐待相談件数が年間10万件を超え、児童養護施設が虐待児のケア提供の場として重要な役割を担っているにもかかわらず、離職が高い現状は、ケアの向上や人材育成という面でも問題があると指摘せざるを得ない。本研究では、離職の要因を現任者と離職者へのインタビューなどから詳細に分析し離職要因を明らかにすると共に、児童養護施設スタッフのキャリアプランニングに資する「児童養護施設新任スタッフのための離職防止プログラム」を開発し、全国の施設にフィードバックすることを目的とする。 離職に関しては看護職において積極的な研究が行われている。看護職の1年目の離職は約6~9%ほどであり、新人教育のコスト削減とスキルの継承に関する取り組みが始まっている。職場で役に立った支援は、「悩みの原因に直結する職場からの支援」「間接的方法による問題解決への取り組み」であったという研究から、新人への教育・支援に重要なのは、①施設内コミュニケーションをいかによりよくするか(職場内要因)、②「子ども理解」に基づく援助スキルの向上(個人内要因)と考えられる。①の「施設内要因」への対応はほとんど各施設に委ねられている。看護研究では、人間関係は職場定着の重要な要素と考えられており、児童福祉施設においても具体的な方法論が確立される必要がある。②の個人内要因について、施設では上司からのサポートに比べて同僚からのサポートが得られにくいという指摘(村松,2015)があり、施設における「学び合いの場」の創造と「同僚性」の向上、つまり援助チームとしての機能向上が喫緊の課題になっていると指摘できる。本研究では、「施設内」における「学び合い」の機会を確保し、ケアワーカー、心理職の離職防止とケア・スキルの向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、施設の離職状況を把握するとともに、施設の離職者へのインタビューから、離職に至る背景を質的に分析することを試みた。現在その結果を分析中である。 また、2018年度からの①~③の調査を、全国の施設に依頼した。①新任の施設スタッフ(経験年数2年以内)への質問紙調査を年に2回(10分以内に答えていただける簡便なもの)行い、新任スタッフが抱えている困難や、逆に自らの仕事へのポジティブな要因などについて分析する。②同時に、了解してくれた新任スタッフにインタビュー調査(40分程度)を行い、施設スタッフの専門性、職務能力向上のための取り組み、キャリアビジョン等についての質的分析を実施する③①と②は施設の環境要因と関連する可能性があることから、年に1回、施設スタッフ全員に同様の質問紙調査を実施するととともに、スタッフの平均勤続年数を調査する。これまで30を越える施設から協力の申し出があった。
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今後の研究の推進方策 |
①新任スタッフ(Advanced Beginner;施設入職後2年未満)の離職要因の検討と縦断調査の開始:1年目の新人(Novice)だけでなく、「新任スタッフ」を2年未満と定義し、半年、1年、1年半、2年の各段階における離職要因を、職業コミットメント尺度(OCS)日本語版(佐藤ら,2015)および職業性ストレス調査票、やりがい尺度、対人援助職の職業生活出来事尺度・児童養護施設職員版バーンアウト尺度を用いて検討する。さらに、協力施設15施設における離職状況の縦断調査と、施設スタッフへのインタビュー調査から離職要因に関する量的把握と質的分析を実施する。この縦断研究は、5年以上の実施を計画している。 ②離職したスタッフへのインタビュー調査:すでに依頼してある研究協力施設、ならびに研究班とつながりのある組織(社会福祉協議会など)を通じて各施設に研究依頼をし、離職者へのインタビュー調査を実施する。分析は質的研究法(グラウンデッドセオリー法)を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に予定されていた調査を2018年度に行うため。
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